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【インコタームズ2020】D類型(DAP・DPU・DDP)について

国際間の貿易取引を円滑に進めるために制定されているインコタームズには、E類型・F類型・C類型・D類型の4つの種類があり、それぞれの種類によって売主と買主の費用等の負担範囲が設定されています。

そこで今回の物流手帖では、インコタームズ2020に含まれるD類型(DAP・DPU・DDP)のルールについてご説明していきます。

※本記事は2023年5月時点の情報をもとに作成しています。

 

インコタームズ2020について

インコタームズは国際間の貿易取引において、契約を締結する際の取引条件の基準となる共通のルールを示したもので、項目ごとに条件に沿った費用負担や危険負担の範囲などが記されています。

記されている内容は時代の変化に合わせて何度か改定されており、2020年版が現時点での最新版となっています。

インコタームズは、それぞれの条件のアルファベット頭文字を示した4つの種類と、輸送形態を2つに大別したグループに分けられており、今回ご紹介するD類型(DAP・DPU・DDP)は、売主が「貨物を目的地まで輸送する」間に必要な費用と危険を負担する、といった到着条件についてご説明します。

なおインコタームズについては、以下の記事で詳しくご紹介していますので、ぜひご覧ください。

参考インコタームズ2020とは?2010版との違いも解説

2020年1月に新しくなったインコ ...

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DAP(Delivered at Place)

DAP(Delivered at Place) は「仕向地持込渡し」という意味合いの条件で、輸送を終えて指定仕向地に到着した後、貨物の荷卸し準備が整っている状態(荷卸しはされていない状態)で、貨物が買主に委ねられるときに引渡しが完了となり、このときに「貨物の費用負担と危険負担が売主から買主に移転する」といった条件です。

引渡しが完了した時点で費用負担や危険負担などの責任が買主に移転するので、荷卸し作業にかかる費用や輸入通関、通関の際に必要な関税の納付などは買主が負担するものとなります。

このようにインコタームズでは、貿易における売主と買主の義務や責任、費用負担、危険負担の範囲といった点を中心に条件が規定されています。

 

DPU(Delivered at Place Unloaded)

DPU(Delivered at Place Unloaded) はインコタームズ2020版から新たに導入された条件で、「荷卸込持込渡し」という意味合いになります。

指定仕向地に到着した後、貨物の荷卸しが完了している状態で、貨物が買主に委ねられるときに引渡しが完了となり、このときに「貨物の費用負担と危険負担が売主から買主に移転する」といった条件です。

DAPでは貨物の荷卸しがされていない状態で買主に移転されますが、DPUでは荷卸し完了後の引き渡しとなるため、作業にかかる費用負担や危険負担を売主が請け負います。

なお、この場合の輸入通関や通関の際に必要な関税の納付などは買主が負担するものとなります。

 

DAT(Delivered at Terminal)について

インコタームズ2010版では、DAT(Delivered at Terminal)がありましたが、こちらは前述のDPUに吸収された形で条件から削除されました。

インコタームズ2010版におけるDAPとDATの違いは、引渡し完了の時点が貨物の荷卸しがされているか否か、すなわち売主が荷卸し作業にかかる費用負担や危険負担を請け負うかどうかといった点ですが、DAPの引渡し場所にターミナルも含まれていたため、2020版では引渡し場所をターミナルに限定しない、いかなる場所(Place Unloaded)でも可能といった意味に改称されました。

 

DDP(Delivered Duty Paid)

DDP(Delivered Duty Paid) は「関税持込渡し」という意味合いの条件で、輸送後の指定仕向国で輸入通関や納税を済ませた後、輸入国の指定場所まで貨物を持ち込み(到着した状態)を行った時点で引渡しが完了となり、このときに「貨物の費用負担と危険負担が売主から買主に移転する」といった条件です。

指定場所は港湾地区のコンテナターミナル(CFSなど)で引渡しを行う場合もあれば、内陸部の公共ターミナルや買主の工場または倉庫などの施設で行うこともあります。

なお、引渡しが完了した時点で費用負担や危険負担などの責任が買主に移転するので、荷卸し作業にかかる費用は買主が負担するものとなります。

 

まとめ

今回はインコタームズ2020に含まれるD類型(DAP・DPU・DDP)のルールについてご説明しました。

インコタームズ2020には、その他にも数種類のルールが制定されていますが、実務上でよく使用されている条件でCIFとFOBがあります。

CIFとFOBについては、下記の記事で詳しくご紹介していますので、ぜひご参考ください。

参考【貿易条件】CIFとFOBの特徴や違いについて

貿易条件(Trade Terms)とは、異な& ...

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