2020年1月に新しくなったインコタームズ。海外との商業的な取引、すなわち貿易において、必須となる「取引条件」の共通ルールといった位置付けになりますが、その内容は最初に制定された1936年から何度か改定が行われています。
物流手帖では、以前『インコタームズ2010』についての記事を公開していますが、今回は現時点で最新型の『インコタームズ2020』の概要についてご説明していきます。
※本記事は2022年1月時点の情報をもとに作成しています。
インコタームズとは?
インコタームズは英語で、Incoterms と表記されており、インターナショナル(International:国際)とコマース(Commerce:商業)、そしてタームス(Terms:条件)といった言葉からなる共通の用語で、国際貿易における取引条件の規則(ルール)を定めたものです。
インコタームズが制定されたのは1936年で、フランスのパリに本部を構える国際商業会議所(ICC/International Chamber of Commerce)によって制定されました。
国際商業会議所は、世界中の民間企業の国際ビジネス(国際貿易や投資など)の促進、市場経済システムの発展、世界経済を取り巻く様々な問題への提言を目的として、世界130カ国以上の国内委員会や企業・団体によって構成されています。
インコタームズはそのうちの活動の一つとして、国際貿易における取引条件(売買契約など)の交渉を円滑化するといった目的を達成すべく、それらの基準となる共通ルールを示すために制定されました。
それまでは国際貿易において、自国と他国の文化や価値観、習慣などの違いからいきなりスムーズに取引を行うことが困難であり、それらの交渉には大幅な時間と労力が必要とされていました。
そういった問題を解消するために作られたインコタームズですが、世界の経済状況や各国の文化や価値観、習慣などは時代とともに常に変化し続けるものですので、それに伴い何度か改定が行われています。
最初に制定された1936年から、1953年、1967年、1976年、1980年、1990年、2000年に改定が行われ、そして前回版の2010年、今回の2020年版と続いています。なお、2017年版など他の年号版は存在しないので注意が必要です。
インコタームズ2020の概要
インコタームズ2020は、それぞれの意味のアルファベット三文字からなる表記で記された(EXW、FCAなど)11項のルールに沿って、輸出入を行うものの責任や費用負担の範囲、また輸出入における様々なリスクの移転時期などが定められています。
これら11項のルールは、一つまたは複数の輸送手段にも適したものと、海上および内陸水路輸送のためのものの2種類にグループ分けされています。
■ 一つまたは複数の輸送手段にも適したルール
EXW、FCA、CPT、CIP、DAP、DPU、DDP
■ 海上および内陸水路輸送のためのルール
FAS、FOB、CFR、CIF
各項目について詳しくは、前回の記事をご参考ください。
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インコタームズ2010との違い
前回版のインコタームズ2010と今回の2020版の違いについて、いくつか要点をかいつまんでご説明すると、以下の点が挙げられます。
①FCAの一部。売り手が、買い手の指定する運送人へ貨物の引き渡しを行なった際に、船積船荷証券の発行を求めることができるといった内容。
②CIPおよびCIFの取引条件における貨物保険の担保範囲。
CIPではより広い担保範囲を、CIFでは最低限の担保範囲を保証するといった内容。
③DATの項目がDPUへと変更された点。
DPUは、売り手が仕向地に貨物を持ち込んで、荷卸しするまでの責任を負うといった取引条件。
④FCA、DAP、DPU、DDPの一部。
売り手または買い手が自らの輸送手段を用いて輸送手配を行うことができるようになりました。
⑤各条件における売り手および買い手の費用負担の一覧。
11項それぞれの費用負担の比較がしやすくなりました。
適用する際のポイント
インコタームズは必ずしも最新版を使用しなくてはならないといったルールはなく、前回版やそれ以前のインコタームズを使用することも可能です。
ただし、取引を行う当事者間で認識のズレがあってはなりませんので、契約時にどのインコタームズを使用するか明確にする必要があります。
またインコタームズは、あくまでも国際貿易取引の際の指標となるルールを規定しているものであって、法的な性質・拘束力などはありません。
まとめ
売り手(シッパー/Shipper)と買い手(バイヤー/Buyer)のそれぞれが、どこまで・なにを負担するのかを決める際に使用されているインコタームズ。
貿易の取引条件(ターム)の交渉時には、インコタームズをもとに双方で入念かつ柔軟なやり取り(買い手側からのリクエストに応じて対応するなど)が行われているケースがほとんどで、費用負担や保険の適用範囲などにお互いが合意し、それぞれの認識に齟齬が発生しないようにすることが重要です。
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