近頃ではIT化の普及・発展に伴い、様々な海外製の商品を個人でも簡単にインターネットを通じて購入することができるようになっています。
また日本国内のお店でも様々な輸入品が陳列されていたり、輸入品の専門店なども都心部や大型の商業施設に出店・併設されていることも多くあります。
それほど身近になった海外製品ですが、どのような流れで商品が輸入されているのでしょうか。
また個人輸入の場合と商業輸入(一般輸入)の違い、そこにかかる税金などはどのような仕組みになっているのでしょうか。
そこで、今回の物流手帖では『個人輸入と商業輸入の違い、輸入時にかかる税金(関税)』についてご紹介していきます。
※本記事は2021年10月時点の情報をもとに作成しています。
基本的な輸入の流れ
まずは一般的な輸入の流れについて理解する上で、必須項目である「商品」「代金」「書類と情報」の3つに分けて、それぞれの流れを簡単にご説明していきます。
商品の流れ
国内でモノを購入する際は「何をどこで買うか」が基本となりますが、輸入の場合も同じく「どんな商品をどの取引先から輸入するのか」といったところから始まります。
商品の選定は基本的には2通りあり、すでに商品として認知されているものかこれから世に出される新しい商品を輸入するかによって、取引先へのアプローチが大きく変わってきます。
前者については通常、求める商品を製造している企業に問い合わせを行うことで、交渉段階へと進めることができます。
後者については、海外の展示会やイベントなどに参加して直接話を聞いたり、最近ではWebサイトなどの情報をもとに問い合わせを行なったりすることが一般的です。
この段階でのポイントとしては、取引先が貿易をメインに行なっているかどうかです。
全く貿易経験がない企業の場合は、契約前の入念な事前交渉と綿密な輸入スケジュールの調整など、想定できる限りのトラブルを回避するための準備を行うことが大切です。
こういった場合は、該当国との貿易に精通している仲介業者を通して輸入を行うケースもあります。
契約が成立して商品が発送されたら、保税地域を経由して納入先へと配送されます。
保税地域とは、税関によって管理されている地域で、外国貨物の積卸しや運搬、加工・製造、展示などを行うことができます。
また保税蔵置場と呼ばれるエリアでは、定められた期間内であれば関税などの税金がかからずに商品を一時的に保管しておくことができます。関税については後ほどご説明します。
代金の流れ
代金の流れ自体は国内取引と基本的に同じですが、通貨も違えば物理的な距離も離れているため、商品と代金のやり取りに時間的な差が生じてしまいます。
その場合、代金の支払いが商品の納入後に行われる場合は輸出者側が、前払いの場合は輸入者側が一時的に負担をすることが一般的とされています。
そのため、契約前にはしっかりと取引先の信用調査を行うようにしましょう。
また最近では代金の一部を前払いし、受け取りが完了した後に残りの金額を支払うケースなどもあるようです。
決済方法は、海外送金などで直接支払うか双方の取引銀行を保証人とした信用上取引(L/C)などで行われるのが一般的です。
書類と情報の流れ
まずはじめに輸入に関する書類や手続きは様々あり、国ごとに法律も異なるので、それらを自身で不備なく行なうことは非常に難しい作業となります。
そのためフレイト・フォワーダーと呼ばれる貨物輸送のプロフェッショナルに業務を依頼することが一般的です。
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主な書類の流れとしては、売買契約書を締結するところから始まります。
契約書には商品価格や納期、決済条件などの取引に関する情報を明記します。
またこの際に、インコタームズと呼ばれる国際商業会議所(ICC)によって定められた取引条件の規則に基づいて、貿易に関する責任範囲の所在なども明記される場合があります。
契約が締結されると輸出者側が船積み・買取り書類を発行します。商品を船で運ぶ場合と飛行機で運ぶ場合とでは必要となる書類が異なるので注意しましょう。
必要な書類が揃ったら、輸入者側は税関で輸入の申告・手続きを行います。これを通関と呼び、これらの手続きは通関業者に委託するのが一般的です。なお、この時点では商品は保税地域に保管されています。
問題がなければ関税や輸入消費税を支払い、搬出許可が降りてようやく商品が手元に届きます。
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※本記事では、大まかな輸入の流れについてご説明しましたが、ご参考までに上記の記事でも輸出入に関する内容を記事にしておりますので、合わせてご覧ください。
個人輸入と商業輸入(一般輸入)の違い
個人輸入とは
個人輸入について法的な定義はなされておらず、一般的には海外製の商品を個人で使用することを目的に直接購入(輸入)することを指しています。
個人的にインターネットを通じて海外メーカーや小売店から購入をしたり、輸入代行業者を通じて輸入したりする方法などがこれにあたります。
主な輸送方法は、国際郵便(EMS)や国際宅急便(クーリエ)または一般貨物として船便や航空便を利用する方法などがあります。
個人輸入の場合でも通関手続きは必要ですが、EMSの場合は簡易通関(郵便局内で手続き)が行われ、クーリエの場合は宅配業者が行います。
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個人輸入の場合は正規輸入品よりも価格が安価なことが多く、気軽に海外製の商品を購入できるメリットがある反面、あくまでも個人の範囲で直接取引を行うので、万が一、商品に何か問題が発生した場合も自身で処理しなければならないといったリスクがあります。
なお個人輸入であっても、原則として関税が課されることになるので注意しましょう。
また、輸入自体が禁止されている品物や、輸入が規制されている品物もあるので、事前に税関に確認を行うようにしましょう。
商業輸入(一般輸入)との違い
個人輸入と商業輸入(一般輸入)の一番大きな違いは輸入の目的にあります。個人輸入は個人で使用する範囲の品物(量)が対象であり、そのために簡易税率や免税などの仕組みが存在します。
この「個人で使用することを目的として」という表現は、そのまま個人輸入の制限の基準となっているので、贈り物であったり、家族や友人などに代わって輸入をしたりする場合も個人輸入の対象外となるので注意しましょう。
なお個人輸入の範囲か否かは商品を購入した時点では判断されず、最終的には商品が国内に到着(保税地域に)してから税関によって判断がなされます。
関税について
関税とは「輸入品に課される税」と定義されています。そのため消費税とは異なる税金であるという点がポイントです。
関税が課される税率は輸入される品物の種類ごとにそれぞれ設定されているので、詳しくは輸入を予定している港の税関などに問い合わせを行いましょう。
課税の対象となる価格(基準となる価格)は個人輸入と商業輸入の場合で算出方法が異なります。
個人輸入は海外小売価格に0.6を掛けた金額が対象となり、商業輸入は海外小売価格に運送費および保険料を足した金額が対象となります。
※課税の対象となる品物の価格が1万円以下の場合は原則として関税、消費税および地方消費税が免除されますが、対象外の品物もあるので注意しましょう。
※課税の対象となる品物の合計金額が20万円以下の場合は、簡易税率が適用されます。
必ず適用されるという仕組みではないので注意が必要です。
詳しくは税関のホームページで分かりやすく記載されているので、以下のリンクなどをご参考ください。
参考・引用:関税のしくみ
参考・引用:個人輸入とは
参考・引用:個人輸入通関手続きのご案内のパンフレット
参考・引用:少額輸入貨物の簡易税率
まとめ
インターネットが普及したことによって、海外に直接足を運ばなくても様々な海外製の商品を購入することができるようになり、とても便利に感じることも多い世の中ですが、国際間の取引においてはそれぞれの国の文化や法律が異なるので、システムの利便性だけにとらわれず事前にしっかりと輸出入に関する情報収集を行うことが大切です。
アスト中本では国際間の貨物の運搬から輸出入の手配、付随する業務を一貫して承っております。
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