アスト中本では、多様化する国際物流のニーズに応えるべく、グローバル・ロジスティクス事業を展開しています。
日本・中国・韓国・タイを結んだアジア4極体制のネットワークを構築し、各現地法人でも様々な人が働いています。
タイのお盆ソンクラーンの間に帰国した、ASUTO GLOBAL LOGISTICS(Thailand) のMANAGING DIRECTOR前浜盛正さんに話を聞き、タイの現地法人の立ち上げや人材育成について「熱く」語ってもらいました。
-設立から6年経ちますが、現在のタイ法人の業務はどのような内容ですか?
タイの日系企業が集まるアマタナコン工業団地に隣接した場所に倉庫があります。
主に、倉庫業と流通加工の業務、トラックとコンテナ輸送業務、通関などの貿易関係の業務を行っています。
一から立ち上げましたので、当初はお客様も少なく危機感を持っていましたが、今はある程度のボリュームを扱うようになり、新たな営業にも力を入れています。
-現地の業績は順調に伸びてきているようですね?
仕事には波がありますから、いつも順調、というわけにはいきません。
特に当初は倉庫はあるのに、仕事がなくてほとんど空という状態でした。
そこから、少しずつ増えてきて半年後にはようやく倉庫がいっぱいになりました。
ところがその半年後に荷物が出ていき、また空っぽに...
そういう繰り返しで、2、3年目までは苦労しました。
4年目になってやっと計画が立つようになり、事業として見えてきた感じです。
-立ち上げから、ということでご苦労も多かったのでは?
タイの現地法人設立に向けてなぜか私が抜擢されまして...
初めは一週間ごとに出張で行って、試行錯誤しながら半年かけて準備しました。
タイの弁護士さんと法律的な問題はどうするか、現地スタッフの採用はどうするかなど、出張のたびに課題を持って、ひとつひとつクリアしていきました。
とにかく全くの手探り状態で不安でしたが、その分、新しいことに挑戦するワクワク感もありました。
設立後は、夫婦でタイに移住しました。
言葉の問題や生活習慣の違いなどは、行けばなんとかなるかと深く考えませんでしたね。(笑)
-現地の人材育成に力を注いでいると聞いていますが?
現地の人4名を採用して、日本人は代表の私だけという形でスタートしました。
日本人をあえて入れなかったのは、ローカル企業としてやっていきたいと考えたからです。
業務量の増加にともない、現在は20人くらいです。
一番苦労したのは、時間に対する考え方の違いですね。
タイは洪水や渋滞が多いので、遅刻が当たり前なんです。
遅れてもかまわない、仕方ないという感じです。
なので、私が毎朝6時半に来て一番に倉庫の鍵を開けて準備するようにしています。
そうすることで、だんだん遅刻は減ってきました。
未だにスケジュール管理には苦労していますけどね...
マネージャーを通じて規律を守るように現場に伝えてもらっています。
-マネージャーのポジション、管理職も育成されているのですね?
タイは階級社会なので、現状より上を求めない、そもそもキャリアアップはないと思っている人が大多数です。
役職がつく日本のような組織図が作りづらいし、管理職の人材を育てるのはとても難しいです。
ただ、家族を養っていくためにもっと稼ぎたいという人もいるので、こんな役職もあるよ、もっとお給料が増えるよ、と提案して適正のある人にがんばってもらっています。
今のマネージャーは、1人は立上げ当初からの男性メンバー、もう1人は女性で4年目になります。
はじめは私も含めて三者で毎日、現場の課題について話し合いました。
3年くらいしてやっと会社のやり方や私の考えがわかってきて、「自分たちの会社をこうしたい」というふうに考えるようになってきてくれました。
新規顧客の獲得についても営業担当は私ですが、マネージャーもプレゼン資料を作り「私たちはこんなことができます」と、お客様に提案できるようになってきました。
安全面などの判断も、以前は「どうしましょう?」と質問が多かったが、今は「これはこうしました」と報告が出てくるようになっています。
-海外で現地法人として、成功する秘訣はありますか?
私はいつも「タイで働かせていただいてる」と思って仕事をしています。
現地の人に対して、上から目線ではうまくいかない。
“郷に入っては郷に従え”ですね。
現場スタッフが働きやすい環境を作るために、何度も話し合いを重ねました。
当初は私も現場に出て、気になることや改善すべきことを、その都度みんなを集めて話をしました。
個別に話をすると自分だけ責められたと思うので、全員で共有するようにします。
たとえば、「梱包はこうしなさい」と言うより「なぜそういうやり方をするのか」を聞いて、お客さんに迷惑をかけないことが第一だと伝え、製品が傷つかない梱包の仕方、ミスの少ない方法を私が見本をみせて同じようにやってもらうようにしました。
タイでは先生や上司は雲の上の人の様な存在で、物申すことなどできません。
ですので、現場職員から私に意見することはありません。
私の方から彼らのところに歩み寄らないと心を開いてくれない。
だから社長の私が現場に入ることは、彼らにとっては刺激になったようですね。
-現地の国民性や習慣に合わせることも大切ですね?
タイは「微笑みの国」という通り、みんな穏やかです。
怒っても“何をカリカリしているの?”という感じで、伝わらない。
だから、私も笑顔を忘れないようにしています。
もちろん、私にも相手にも笑顔の奥の本心があるわけで、信頼関係を築くことが大切です。
問題があってもにっこりされると“まあええか”と思ってしまうけれど、笑顔の奥の内面を見るようにしてコミュニケーションをとっています。
-スタッフはアスト中本で働くことにやりがいを感じているのですね?
うちのスタッフはもともと日系の物流他社に勤めていた人が多いのですが、なぜ立ち上げたばかりの当社で働きたいのか聞いてみると、スキルアップしたいと考えている。
日系大手の物流会社では、ひとつの業務だけを担当してそれ以上のレベルアップはなかなかできないし、管理職は日本人なのでがんばっても昇進できないのです。
うちの会社で働くことで、彼らのキャリアアップにつながり、家族の笑顔が増えるとうれしいですね。
インタビューで同席した、グローバル・ロジスティクス統括部・部長の棚田さんは、「異国でのスタッフの教育は至難の技。いいスタッフを育てたことが、彼の一番の成果。タイ法人の成功の要因」と大きく評価しています。
前浜さんのタイの話は、まだまだ続きます。
後編は、前浜さんご自身のこのまでのキャリアやこれからの展望について大いに語ってもらいます。
お楽しみに!
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海外進出【タイ】現地法人の立ち上げ、人材育成について<後編>
アスト中本の国際物流の拠 ...
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