1950年代後半に海上コンテナが開発されてから、貿易取引における海上輸送の形態は大きく変化を遂げ、今ではコンテナ船による海上輸送が中心となっています。
コンテナとはスチールまたはアルミニウムでできた箱状の容器のことで、国際標準化機構(ISO)によって定められた規格に基づいて作られています。
コンテナの大きさはその種類(形態)によって外寸と内寸が異なりますが、サイズは20フィートと40フィートのどちらかを使用することが一般的とされています。
コンテナで貨物を輸送する場合、20フィートのサイズでも、外寸で縦が約6メートル、横が約2.5メートル、高さが約2.8メートルほどの大きさとなるため、例えば単独の荷主の小口貨物をコンテナで運ぶとなると、コンテナ内に余分なスペースができてしまいます。
そのため海上コンテナ輸送には、FCLとLCLといった輸送形態があり、貿易取引における様々なシーンで海上輸送が利用できるように、それぞれに適した方法を選べるような仕組みが考えられています。
今回の物流手帖では、海上コンテナ輸送における「FCL」と「LCL」の概要や流れ、またコンテナへの積み込み、料金体系について、わかりやすくご説明していきます。
※本記事は2023年1月時点の情報をもとに作成しています。
FCLとLCL
FCL(エフシーエル)とは英語でFull Container Loadのことで、Full(満たす) Container(コンテナ)Load(積み込む)すなわち「コンテナ満載」を意味しており、対してLCL(エルシーエル)は、Less Than Container Load(コンテナ満載に満たない)といった意味で、それぞれ海上コンテナ輸送の輸送形態を表す用語として使用されています。
このように用語の意味を直訳した場合は、コンテナに満載かそうでないかといった意味になりますが、実際には「FCL」も「LCL」も運送人による荷主向けの海上貨物輸送サービスのうちの一つです。
FCLは単独の荷主に対してコンテナ1本を丸ごと仕立てて輸送を行い、LCLは複数の荷主から小口貨物を集めてコンテナに混載する(FCLとしてブッキング)サービスです。
サービスの提供元となる運送人とは、NVO/NVOCC(海上貨物輸送を取り扱う業者)やフォワーダー、船会社などがあげられます。
コンテナは中身が満載か否かに関わらず輸送する際は1本づつですので、単独の荷主の小口貨物をFCLで輸送してしまうとコンテナに余分なスペースができてしまうため、LCL貨物として複数の荷主の貨物を集めて混載し、コンテナのスペースを埋めることで運送人と荷主の双方にメリットのある仕組みになっています。
輸出までの流れ
FCLとLCLでは、貨物を輸出するまでの流れやコンテナへの積み込み手順が異なります。
その理由としては、それぞれの輸送形態の仕組みに違いがあるからです。
本項では、以下の画像をもとに一般的なFCLとLCLの流れについてご説明していきます。
FCLの場合まずはコンテナを確保し、工場や倉庫などで貨物の積み込み(バンニング)を行います。
バンニングを行ったコンテナは港湾地区まで輸送します。
運び込まれたコンテナは「CY(コンテナ・ヤード)」と呼ばれるエリアで一時的に保管し、通関手続きなどを済ませてから本船へ積み上げます。
本船へのコンテナの積み込みはガントリークレーンと呼ばれる大型のクレーンで行います。
一方、LCLの場合は「CFS(コンテナ・フレイト・ステーション)倉庫」と呼ばれるエリアに、混載する小口貨物を集めてから通関手続きなどを行い、バンニングを行って1本のコンテナに仕立てられます。
その後はFCLと同様にCYへと運び込んでから本船へと積み込まれます。
なお、FCLとLCLどちらの場合も本船へのコンテナ積み込みには期限(カット日)が設けられているので、あらかじめ確認しておくと良いでしょう。
LCL貨物について
これまでご説明したように、LCL貨物は複数の荷主から集めた小口貨物を混載して輸送するサービスですが、小口貨物の荷姿や数量は荷主によって様々です。
段ボール(カートン)1ケースや袋状のバッグなどの軽量貨物から、専用のパレットにパレタイズされた梱包貨物、木箱ケース、スキッド梱包された重量品など幅広い種類があります。
LCL貨物を輸送する際のポイントとしては、貨物を混載することでコンテナのスペースを埋める、すなわちコンテナの許容積載量に対して「いかに積載効率を高めることができるか」があげられますが、積載効率だけでなく同時に作業効率も重視されています。
もっとも積載効率が高い積み込み方法は手積み(バラ積み)で隙間なく埋めることですが、その場合は積み卸しの際に人手が必要になり、作業時間も長くかかります。
その分パレタイズされた貨物はフォークリフトなどを使用してバンニングを行うので、作業も早く済み作業料金も前者に比べてかかりません。
コンテナに積み込んだ貨物は、必ず仕向地で積み下ろしされることを考えると、全て手積みで行う場合は荷受けする倉庫側でも人手と手間がかかるので、場合によっては断られるケースもあり、作業料金も割高になります。
そのため現在の日本では、コンテナ内にしっかりと収まる適正サイズのパレットを用意して、その上に小口貨物を搭載してシュリンク包装やラッピングを行い、パレット単位でバンニングするケースが主流となっています。
補足として、東南アジアや中国発などのLCL貨物の場合は、今でもバラ積みで満載にして輸送するケースもあるようです。
料金体系について
FCLとLCLの基本的な料金体系は、海上運賃+各種サーチャージとなりますが、FCLはコンテナ1本あたりに料金が設定されているのに対して、LCLの場合は貨物1つあたりの容積(m3)、もしくは重量(t)の数値のどちらか大きい方が基準となります。
[ 容積と重量の比較(例) ]基準となる単位:Freight Ton(フレートトン、F/T)
それぞれの数値の換算方式:1m3=1t
運送人が設定したタリフ運賃:1F/T あたり USD80
容積が1m3 重量が 1200kg の貨物の場合
→ 1.2F/Tが採用され、料金はUSD96
容積が2m3 重量が 1500kg の貨物の場合
→ 2F/Tが採用され、料金はUSD160
まとめ
今回は海上コンテナ輸送における「FCL」と「LCL」の概要や流れ、またコンテナへの積み込み、料金体系についてご説明しました。
いざ貿易を行う際には、貨物をどのように運ぶかは取引上で非常に重要なポイントとなりますので、航空貨物や海上貨物、または複合輸送などから最適な手段を選びましょう。
ご参考までに今回の記事に関連する記事をぜひご活用ください。
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参考バンニング・デバンニング作業について
前回の物流手帖では、輸出 ...
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