いざという時の災害や不測の事態が発生した際、世界経済の発展に大きく影響している「サプライチェーン」という仕組みを維持していくためには、サプライヤーをはじめ荷主や物流業者といったサプライチェーンに関わる全ての企業との迅速な連携が、事業の早期復旧につながります。
今回の物流手帖では、サプライチェーンの意味や特徴、サプライチェーンにおけるBCP対策の重要性についてご説明していきます。
※本記事は2020年7月に公開、2024年2月に再編集した記事です。
サプライチェーンの意味
サプライチェーン(供給連鎖)とは、原材料の調達に始まり製造・輸送などの工程を経て、完成した製品が消費者の手元に渡るまでの一連の流れ全体のことをいいます。
通常の需要と供給といった単一の関係ではなく、流れ全体における各工程(プロセス)ごとに供給される資源の繋がりを表す様で、大半が他社を含めた形で構成されることが多いとされていますが、中には自社でその全てを完結しているケースもあります。
自動車製造業で例えるとするならば、サプライチェーンは部品の原材料となる鋳鉄や樹脂材を製造・販売する企業から始まり、次にその原材料を加工し、自動車に必要な部品を製造する企業へと流れます。
完成した部品はメーカー企業等に集まり、そこで組み立てが行われ、完成品として出荷された商品が店頭に並びます。
このように、サプライチェーンには多くのプロセスがあり、その間で供給される資源の繋がりが全体を構成することから、言葉通りの「供給連鎖」が成り立っています。
サプライチェーンの特徴(情報の流れ)
サプライチェーンの特徴は、情報やお金が逆に流れてくるという点です。
お金は商品を提供する対価として得られる代金のことですが、サプライチェーンによって得られる情報とは、市場における自社の商品に関する情報のことを指しています。
例えば、ECサイトなどのネットショップでパソコンを購入後、届いた商品を実際に使用した際に、購入したサイトの口コミ欄やSNSで、使用感やサービスの対応などについてレビューを書き込むとします。
そのレビューが良い内容であれば他のユーザーの購買動機につながり、万が一、悪い内容であった場合も自社の商品やサービスの改善につなげることができます。
つまりサプライチェーンによって得られる情報は、実際に商品を購入した消費者から生産者の元へ逆方向に進んでいくため、その情報は次のマーケティング活動に活かすことができるといったメリットがあります。
サプライチェーンにおけるBCP対策の重要性
現在はサプライチェーンのグローバル化が進み、国内のみならず海外拠点や現地の取引先と連携する形で供給体制を構築するグローバル・サプライチェーンが主流となっています。
グローバル・サプライチェーンの主な目的は、原材料の調達や製造、販売、消費に至るまでのプロセスを国内だけでなく海外にまで拡大することで、販売機会を増やしたり、原材料の調達コストや人件費を削減し、サプライチェーン全体の最適化につなげることです。
一方、グローバル・サプライチェーンは、国を跨ぐ形でそれぞれのプロセスを構築するので、世界情勢の変化や災害などの不測の事態による影響を受けやすいといったデメリットがあるため、いかに安定的な供給体制を継続的に実施できるかが課題となっています。
あらかじめBCP(Business Continuity Plan:事業継続計画)対策を行なっている企業であれば、そうした有事の際の対応や復旧に向けての行動指針が明確化されていますが、サプライチェーンはその性質上、生産から販売までのプロセスが一連の流れとしてつながっているので、一部ではなくサプライチェーン全体としてのBCP対策を行なう必要があります。
そのため、平常時からサプライチェーンに関わる各拠点や取引先との情報共有および連携の強化し、システムで全体を管理することで状況把握にかかるスピードを加速化するとともに、サプライチェーンの根幹を支える物流面(ロジスティクス)との連携やBCP対策も事前に行なっておくことが重要となります。
まとめ
今回は、サプライチェーンの意味や特徴、サプライチェーンにおけるBCP対策の重要性についてご説明しました。
グローバル化されたサプライチェーンを常に安定供給するための仕組みを構築することは、そこに関連する企業にとって重要な課題となります。
また物流面においても緊急時の輸送ルートの確保や、状況に応じた在庫管理など、想定しうる可能性に基づいた事前準備や対策を行なっておくことが大切です。
参考までに、以下の記事ではグローバル・サプライチェーンの意味やリスク管理、 ローカル・サプライチェーン についてご説明していますので、ぜひご覧ください。
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参考グローバル・サプライチェーンとは|リスク管理のための企業体制について
1990年代以降により加速化した ...
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