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グローバル・サプライチェーンとは|リスク管理のための企業体制について

1990年代以降により加速化した経済活動を支えるため、各企業ではグローバルな産業構造とサプライチェーンの構築化が進み、原材料の調達や部品の製造、販売に至るまでのプロセスを海外拠点や取引先と連携する「グローバル・サプライチェーン」といった仕組みが主流となってきました。

今回の物流手帖では、グローバル・サプライチェーンの意味やリスク管理、 ローカル・サプライチェーン についてご説明していきます。

※本記事は2024年2月時点の情報をもとに作成しています。

 

グローバル・サプライチェーンとは

グローバル・サプライチェーンは、原材料の調達から部品やパーツの製造、販売・消費に至るまでの一連の工程(プロセス)を自社の海外拠点、または海外の取引先などと連携し、国内外に渡って行うことです。

通常のサプライチェーンと比べると事業範囲も広域的になり、世界情勢や為替の影響などから受ける間接的な要因への対策や、異なる言語や習慣を持った現地人材の管理・育成など、生産活動に関する管理領域も多岐にわたります。

グローバル・サプライチェーンを導入するメリットは各分野によって様々です。

例えば、原材料を安価に仕入れることができたり、国によってはサプライチェーンに関わる人件費を抑えることができるなど、直接的なメリットに加えて、生産拠点を分散させることで、より安定的な供給ラインを確保することができるなどの間接的なメリットもあります。

さらに海外拠点や海外の取引先と情報共有を行うことで、リアルタイムに各国のニーズに対応できる体制を構築できるため、販売機会も増加し、新たな顧客開拓のキッカケを得ることにも期待が持てます。

しかしながら、グローバル・サプライチェーンにもデメリットがいくつかあります。

管理領域が広がることによって各国の企業体制の安定化が難しくなる点や、海外取引を行うことで発生する為替変動に関するリスクなど、国が異なれば法律も異なるので、手続き関連の業務が煩雑化する点なども考えられます。

近年の出来事で言うと、コロナ禍の影響によって各国間の人や物の動きが分断され、日常生活や社会活動において必要な様々な物質が不足していた状況は、グローバル・サプライチェーンが停止してしまったことによって引き起こった非常事態でした。

たった一つの部品が海外から調達できず、製品が組み上がらないといった状況は、特に海外のサプライヤーに頼る日本の産業構造において死活問題として注目され、同時にグローバル・サプライチェーンに依存する既存の構造に、何かしらの対策が必要と考えさせられる出来事となりました。

このようにグローバル・サプライチェーンにはメリットもある一方、国を跨ぐことによって起こりうる何らかのリスクが常に身近に存在する構造になるため、導入時には事前に様々な可能性を予測し、リスクマネジメントを行なっていくことが重要とされています。

 

グローバルSCM

サプライチェーンにおける全ての工程を管理し、生産状況や在庫状況、売れ行き、各地のニーズなど全体から集めたあらゆる情報を統合し、管理・運用をシステム化することで最適化につなげる仕組みを、グローバル・サプライチェーン・マネジメント(グローバルSCM)といいます。

グローバルSCMの導入によって全体の構造をより正確に可視化することができ、各工程の課題の抽出や在庫数の最適化、廃棄やロスを抑制するための対策、潜在的に発生していた不要コストの削減などに役立てることができます。

また大規模な災害や国際情勢の変化などの有事の際でも、各地の情報をリアルタイムで共有することで、いち早く状況を把握し、対策に講じることができる企業体制の構築も、あらかじめ試験的に導入しテストすることが可能です。

 

ローカル・サプライチェーン

グローバル・サプライチェーンは、サプライチェーンにおける各工程の領域を国内問わず海外まで拡大することで、販売機会を増やし、なおかつコスト削減などのサプライチェーンの最適化につなげる目的がありますが、その性質上、工程の一部が特定のエリアに集中してしまう場合があります。

例えば、原材料の調達において特定の国やサプライヤー経由でその大半を仕入れ、部品の生産を行なっているケースなどが該当します。

その場合、当該国からの供給が停止してしまうと部品の生産ができず、エンドユーザーからの需要に応えることができないため、販売機会の損失や競合他社への乗り換えなどのリスクにつながってしまう恐れがあります。

そのため近年では、グローバル・サプライチェーンの再構築が進められており、その対策のうちの一つとして認識されつつあるのが、ローカル・サプライチェーンです。

ローカル・サプライチェーンは、地域内での生産と消費を目的として構築されたサプライチェーンのことで、比較的限定されたエリア内で商品の生産から販売、消費がなされます。

ローカル・サプライチェーンのメリットは様々ありますが、一つは限定されたエリア内でのサプライチェーンを導入することで、その地域の需要の変動に素早く対応できる点です。

また長距離輸送をする必要がないため、物流面の負担が減り、供給サイクルが向上するだけでなく、エリアを狭めることでコスト削減につながる場合もあります。

さらに地域密着型のサプライチェーンの構造は、地元の企業が活発になり、そこでの雇用も増えることで、地域全体の経済の活性化に役立ちます。

このようにローカル・サプライチェーンには様々なメリットがありますが、中にはサプライチェーンに関連する課題もいくつか考えられます。

課題の例としては、企業がこれまでと異なるエリアに供給体制を構築する必要があるため、その分の投資が必要になる点や、場合によっては新たなサプライヤーを地域で探す必要があるかもしれないといった点などがあります。

これらの課題を踏まえた上で、生産構造を再構築するために必要なコスト面の負担と、安定供給のリスク削減のバランスを考慮し、環境の変化やいざという時に柔軟に対応できる企業体制を構築することは、今後もサプライチェーンに関わる企業にとって大きな課題となるでしょう。

 

まとめ

今回は、グローバル・サプライチェーンの意味やリスク管理、 ローカル・サプライチェーンについてご説明しました。

グローバル・サプライチェーンは、様々なメリットが得られる一方、海外展開することで発生するリスクもつきまとうため、何らかのトラブルがあった時でも事業が継続できるよう、事前に対策を行なっておくことが大切です。

 

参考までに、以下の記事ではササプライチェーンの意味や特徴、サプライチェーンにおけるBCP対策の重要性についてご説明していますので、ぜひご覧ください。

 

参考サプライチェーンにおけるBCP対策の重要性について

いざという時の災害や不測 ...

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