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貿易における費用の種類・お金の流れ・決済方法について

貿易の形態には、個人で貿易を行う場合や少額取引または大規模な商業目的といった様々な形態があります。

また、そのほかに三国間貿易(仲介貿易)などといった第三者を挟む取引なども行われており、貿易形態は多様化しつつあります。

物流手帖でも以前、貿易の主な取引の流れや貿易の際の物流業者の役割、三国間貿易などについて記事にしてきましたが、取引のなかでも非常に重要な項目となる貿易における費用やお金の流れ、決済方法については、具体的にどのような取引が行われているのでしょうか。

そこで今回の物流手帖では『貿易における費用の種類・お金の流れ・決済方法』これら3点について分かりやすくご説明していきます。

※本記事は2022年5月時点の情報をもとに作成しています。

 

 

貿易における主な費用の種類

貿易におけるお金の流れをたどるにあたって、まずはどのような費用が発生するのかを見ていきましょう。

通常の国内で販売を行う商取引と違って海外の企業または個人と取引を行う貿易では、主な費用の種類も大きく異なります。

一番わかりやすい点を挙げるとすれば、物理的な距離が伸びるため輸送にかかる費用が国内に比べると増加する点です。

そのほかにも、貨物の積み卸しにかかる費用や貨物の保険料など様々な費用が挙げられます。

 

輸出の場合

国内で商品を販売する際の価格設定を単純化してみたときに、考えられる費用としては「商品にかかわる代金」と「送料」が挙げられますが、輸出の場合は一般的に国内でかかる送料とは別に「国際輸送運賃」と「運賃以外で輸出貨物にかかる費用」がかかることになります。

また外貨で取引をする場合の為替変動や取引先からの代金回収にかかる信用調査、政治的・経済的な事情の変化などの「リスクにかかる費用」なども場合によっては含む必要があります。

国際輸送運賃は、ただ単に距離イコール費用というわけではなく、貨物の種類や輸送手段、また輸送におけるリードタイム、輸送する時期などの様々な条件によって価格が変動します。

なお、状況に応じてどのような手段で国際輸送を行うべきかを選定したり、先導して段取りを行う業者のことをフォワーダー(フレイト・フォワーダー)といいます。

運賃以外で輸出貨物にかかる費用は、主に「通関費用」や「税関検査費用」、荷役の際に必要となる「貨物の積み卸しにかかる費用」、コンテナ輸送の場合は「バンニングにかかる費用」、貨物そのものや国際輸送にかける保険料」、原産地証明を取得する場合には「必要書類を手配する費用」などが挙げられます。

 

輸入の場合

輸入の場合も通常の国内取引と同様に「商品代金」と「送料」に加えて、輸出時にかかる費用と同じく上記でご説明したような国際輸送運賃やその他の諸々の費用が発生しますが、一番の大きな違いは「関税」と「消費税」です。

関税は輸入する品物や取引内容によって金額が変動します。

なお、ここでいう取引内容とは、個人輸入なのか少額輸入なのか、それとも商業輸入なのかが挙げられます。

消費税はたとえ海外の品物であっても、日本で消費するためのものであれば必ず発生する税金となります。

ちなみに、輸出するために海外から仕入れた貨物の場合は、仕入れ時に支払った消費税の還付を受けることができるので、詳しくは税務署などで確認するようにしましょう。

輸出・輸入どちらの場合でも該当する費用の例として、ほかには「他法令の許可申請および承認にかかる費用」があります。

他法令とは、輸出または輸入する際に税関以外の各省庁の許可・承認が必要な貨物を定めた法令で、知らずに輸入して貨物は到着しているけれど港から引き取りが出来ないといったケースも稀にあるので注意が必要です。

 

それぞれの費用負担は取引条件によって定められる

これまでご紹介してきた貿易にかかる様々な費用ですが、基本的にこれらは取引条件によって売り手(輸出者側)と買い手(輸入者側)どちらがどこまで費用負担をするのかが契約時に決定されます。

取引条件を決めるにあたっては、お互いの認識や考え方が同じであればスムーズに契約を進めることができますが、国境を越えることで習慣や文化の違いなどからスムーズに契約が進まないことも場合によってはあるでしょう。

そのため物流手帖でも度々ご紹介していますが、インコタームズと呼ばれる貿易取引を円滑化するための基準となる国際的なルールが定められています。

最新のものは「インコタームズ2020」で、これらは必ず守らなくてはいけない法的なものではありませんが、一般的にはインコタームズに沿って取引条件を検討することが通例とされています。

 

 

お金の流れについて

直接取引先と金銭のやり取りを行う貿易の場合では、基本的に現金で支払いを行うことはないので、銀行を介して買い手から売り手へ金銭の支払いが行われます。

この場合、外国為替でのやり取りになるので為替変動によるリスクが生じることもあります。

また、海外との取引に実績がある国内の商社などを介して間接的に取引を行う場合(仲介貿易)は、円建てで取引をするので為替変動によるリスクはないものの、仲介手数料などが発生します。

そのほかに、三ヶ国間で輸出・輸入を行う三国間貿易などもありますが、その場合はお金の流れが通常と少し異なりますので、こちらは別の記事にてご紹介しています。

 

  • インコタームズ2020についての記事はコチラ

 

決済方法について

貿易取引における代金決済の手段には以下のような方法があります。

 

送金による決済

売り手が指定する銀行に買い手側の銀行からが代金を送金する方法。

前払いや後払い、または一部を前払いする方法などがあります。

海外送金による決済は、手続きなどが簡易な点や銀行側からの手数料も他の決済方法と比べると安く抑えることができるため、利用されるケースが比較的に多い決済方法です。

銀行間の送金指示を電信で行う電信送金の場合はT/T(Telegraphic Transfer)、送金指示を郵便で行う普通送金はM/T(Mail Transfer)、小切手はD/D(Demand Draft)と表記されます。

この場合、船積書類が銀行を経由することがないので、貨物の引取りもスムーズに行うことができます。

 

L/Cによる決済

信用状(Letter of Credit)とは、買い手の依頼によって銀行(買い手側の)が代金の支払いを保証している証書のことです。

信用状の発行手数料がかかるものの、金銭の受け渡しが確実になるためリスク管理につながります。

ただし、信用状発行のための与信審査や必要書類の提出や照合、諸々の確認作業などが発生するため、貨物の引取りまでに時間がかかります。

売り手は、荷為替手形(B/Lが添付されている為替手形)と船積書類などの必要書類を取引先の銀行に持ち込むことで代金をスムーズに受け取ることができます。

 

D/P、DAによる決済

L/Cによる決済とは違い信用状を発行せず、荷為替手形をもとに決済を行う方法です。

売り手は荷為替手形と船積書類を銀行に提出し、買い手側への代金取立てを依頼します。

この際、銀行は荷為替手形を買い取るか取立て扱いにして買い手側からの代金回収後に料金を支払うかを判断します。

買い手は、取立て銀行から呈示された荷為替手形をもとに代金を支払い船積書類を引き取る、D/P(Documents against Payment)か、期日の代金支払いを約束して船積書類を受け取るD/A(Documents against Acceptance)のどちらかで取引を行います。

 

電子決済サービス

個人輸入や少額輸入の場合は、電子決済サービス(クレジットカード、デビットカード、電子マネーなど)を用いた決済方法も多く利用されています。

 

まとめ

最近では世界的に物流プラットフォームの進歩とネットワーク化が進み、便利で有益な貿易が様々な形態で取引されていますが、お金の流れや決済方法は取引をする上で非常に重要項目です。

他国の企業と契約する前に、どのような決済方法で取引を行うかの事前確認や情報収集、相手先の信用調査などを入念に行うように心がけ、お互いに利益とメリットがある貿易取引を目指しましょう。

 

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