現代社会ではグローバルサプライチェーンなくして日本経済は成り立たないといっても過言ではないほど、国際間で様々な物品や技術などの取引が頻繁に行われていますが、最近では原油をはじめとしたエネルギー関連の資源価格や小麦、卵などの価格が高騰しており、こういった世界情勢の動向も無視できないものとなっています。
他国と取引をする以上、輸出・輸入の際に守らなければならない法律や規定がそれぞれの国に存在しますので、これまでは問題なかった取引でも相手先の国の法律や規定が変わったことによって、取引内容や手続きなどが変わってしまうこともあります。
そこで今回の物流手帖では、輸入を始める前に確認すべきことや貨物と書類の流れについて、分かりやすくご説明していきます。
前回は、輸出に関する手続きの流れについて解説していますので、ぜひ合わせてご覧ください。
※本記事は2023年6月時点の情報をもとに作成しています。
輸入を始める前に確認すべきこと
まず始めに行うべきことは「情報収集」です。
理由としては、輸入(輸出)は相手先が他国であるため、日本の規定や法律のみに従っていれば問題ないというわけではありません。
どこから・何を・どれだけ輸入するのか、またその目的は何なのかなど相手先の国の規定や法律などもあらかじめ調べた上で輸入(輸出)を始めるようにしましょう。
目的を明確にすることが大切
どのような目的で海外から物品や技術を輸入するのかを明確にしましょう。
ここで考えられる目的は大きく分けて3つあります。
一つは、個人で使用することを目的としたケースです。
少量の場合が多く、主にインターネットを通じて海外から「自分で使用する分の少量の商品」などを購入する場合が当て嵌ります。
このようなケースは個人輸入と称されており、旅行などで海外から飛行機で帰国する際に「携帯品・別送品申告書」を記入した経験がある方も多いと思いますが、そこにも記されているように対象商品の金額が1万円以下の場合は免税となります。
次にビジネス目的で大量に商品などを輸入する商業輸入を行う場合です。
この場合は関税だけでなく、輸入許可の承認手続き(通関手続き)が必要になるので、事前にしっかりと確認をしましょう。
知らずに輸入してしまい、海外から日本の保税地域に荷物は届いたけれど、輸入許可をとっていないがために引き取りができない、などといったケースも実際にあるので、ビジネス目的の場合は商談時などの取引が開始する前の時点で、必要な許可や申請などが必要かどうかの確認を入念に行いましょう。
そして最後は、輸入する対象商品の金額が1万円以上20万円以下の場合に適用される少額輸入です。
少額輸入は、小規模のビジネスや贈り物などで他人に贈与するケースに多く見られます。
商業輸入との違いは簡易税率が適用されたり、通関手続きも簡略化されているので商業輸入に比べて手続きが比較的スムーズな点です。
このようになぜ輸入をするのか、その目的によって関税(輸入品に課される税金)の税率や課税対象の金額、手続きが異なります。
関税についてのご説明は、別の記事にて行っておりますのでそちらをご確認ください。
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輸入時の貨物と書類の流れ
輸入時の貨物と書類の流れは取引内容によって異なりますが、基本的には上図のようなイメージで進められています。
通関手続きの際に必要な輸入申告は、貨物が保税地域に搬入されてから行います。
申告後は税関の審査・検査が行われた後、関税等の税金の納付がある場合は、料金を支払い後に輸入許可がおります。
昔と違って最近では、通関手続きをシステム上で完結できるNACCSを利用するケースが一般的とされており、スピーディーかつ簡潔に手続きを行うことができる仕組みが考えられています。
ビジネス目的で輸入を行う場合、インターネットやSNSが発展した現在では特にスピード感を求められることも多く、輸入前の市場調査やマーケティングに加えて、どのように販売・プロモーションを行うかなどに合わせて、輸入のスケジュールを組み立てることが大切です。
再輸出について
輸入の際に相手先の国の規制や法律に注意しなければならない一例として、米国の輸出規制であるEAR(Export Administration Regulations)があります。
EARは米国の管轄外である他国の取引においても域外適用されます。
また米国から仕入れたものを再輸出する場合(輸入後に日本で加工してから他国へ輸出する場合など)にも適用され、場合によっては米国側から再輸出の許可が必要となるケースもあるので注意しましょう。
輸入時に必要な書類
輸入時の通関手続きを当事者本人が行うケースは稀で、一般的には通関業者に代行してもらうケースが殆どです。
その場合、どのような手続きが行われるのか事前にある程度把握しておくことで、通関業者とのやり取りがスムーズになります。
手続きの際に必要となる関連書類には以下のようなものがあります。
①Arrival Notice (A/N)
輸入者に向けて発行される貨物到着案内の通知書のことで、船会社やフォワーダーなどの代理店が発行します。船の到着港や予定日、搬入先など貨物の到着案内に関する内容が記されています。
②Invoice
輸出者が発行する送り状のことで、貨物の品名や数量、金額、輸送方法、支払い手段などの明細が記載されています。輸入者側では仕入れ書としても活用されています。
③Packing List
梱包明細書のことで、荷物の梱包方法や形態、個数、重さ、容積などが記されています。
④Bill of Lading (B/L)
海上輸送で貨物を運ぶ際に発行される船荷証券という書類で、書類そのものが貨物の所有権を表す有価証券としての役割を担っています。B/Lは貨物の引渡しの際に使用しますが、場合によってはWaybillと呼ばれる貨物運送状を使用するケースもあります。
そのほかにも、保険証券、原産地証明書、他法令の許可・承認証、減免税証明書など、輸入する貨物や状況によって必要書類が変わってくるので、事前に必要となる書類を確認し、早めに準備を行いましょう。
まとめ
今回は、輸入を始める前に確認すべきことや貨物と書類の流れについてご説明しました。
個人で輸入する場合もビジネスで輸入する場合も、どちらも事前に必要な許可や手続きなどをしっかり調べることがリスク管理に繋がります。
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