近年、需要が高まっている三国間貿易ですが、以前、物流手帖ではその仕組みやフローチャート、また三国間で貿易を行うことで得られるメリット、そして注意点などについてご説明しました。
そこで今回の物流手帖では、その記事の補足として、三国間貿易における必要書類や輸出規制の一部についてご説明していきます。
※本記事は2022年8月時点の情報をもとに作成しています。
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参考三国間貿易の仕組みとは?分かりやすく解説
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三国間貿易で必要な書類
三国間貿易の仕組みについては、以前の記事で詳しくご説明をしているので本記事では内容を省略しますが、まずは前回のおさらいとして、取引全体の流れについて簡単にご説明していきます。
取引全体の流れ
通常のいわゆる貿易とは、ある一国の個人や企業などが別の国の取引先に物品を販売(輸出)したり、逆に他国の取引先から物品を購入(輸入)することを指しています。
三国間貿易(仲介貿易)の場合は、名前の通り第三者である別の国の個人や企業などが取引に介入する貿易形態のことで、物品・金銭・書類の流れが通常の貿易とは異なります。
ここでのポイントとしては、“第三者が取引に介入すれば全て三国間貿易に該当するものではない”ということです。
該当しないケースについては、以前の記事で一部ご紹介しておりますので、ここでは一般的な三国間貿易に該当するケース(一例)をご紹介します。
①取引主体者である日本の企業A社が、B国の取引先と売買契約を結びます。
②販売する製品は、C国のサプライヤーからB国へ輸出します。
③C国のサプライヤーは、日本の企業A社に製品代金を請求します。
④製品代金をもとに、A社はB国に販売価格での請求を行います。
⑤B国の取引先から、請求した代金を受け取ります。
⑥日本の企業は、C国のサプライヤーに製品代金を支払います。
取引の流れは契約内容によって異なりますが、上記の場合、製品はC国のサプライヤーからB国の取引先へ輸出されるものの、取引主体者はあくまでも日本の企業A社であり、売買契約はA社とB国の取引先との間で結ばれた国際間の商取引であるといった三国間貿易となります。
主な必要書類について
三国間貿易で必要となる書類は、取引内容によって異なりますが主に以下の書類などがあげられます。
・インボイス
・パッキングリスト
・船荷証券
・原産地証明書
・保険証券
・支払受領報告書
厳密にいうと輸出する貨物の種類や物品の出どころとなる生産国、また輸出先の相手国によって必要な書類が変わってきます。
理由としては、物品が実際には自国から輸出される場合でなくても、安全保障貿易管理制度の規制対象になるからです。
ちなみに、規制対象は売買取引だけでなく、物品の貸し借りや贈与も含まれているので、あらかじめ注意しておきましょう。
また、物品だけでなく海外で技術提供(現地で行うセミナーなど)を行う場合も「輸出」に含まれるので、物品の輸出と同じく輸出規制(安全保障貿易管理)の対象となります。
この場合も規制対象に該当する場合は、経済産業大臣の許可が必要になるケースもあるので事前に十分確認しておくと良いでしょう。
規制には、リスト規制、キャッチオール規制、積替規制、仲介貿易取引規制、みなし輸出管理といった規制があります。
いずれにしても規制対象となる場合は、事前に経済産業大臣の許可が必要となります。
補足として、日本と同じように輸出管理を厳格に実施していて、なおかつ国際輸出管理レジームに参加している国のことをホワイト国(現在はグループA)と呼びます。
国際輸出管理レジームとは、先進国を中心とした国際的な枠組みのことで、平和と安全の維持を目的として貿易を管理・制限する体制または制度のことです。
輸出先がホワイト国(グループA)に該当する場合、キャッチオール規制の対象外になるなど輸出管理の面で優遇措置が与えられます。
逆に言えば、発展途上国など規制対象となる国と取引を行う場合は、事前に許可や申請などが必要となるケースが多いので、その分準備する書類や手続きが増えます。
ホワイト国(グループA)の対象となる国は、その時の状況によって除外されることもあるので、詳しくは経済産業省のHPよりご確認ください。
参考:経済産業省
参考:安全保障貿易管理
スイッチング・インボイスとは?
三国間貿易において使用されるインボイスに、スイッチング・インボイスがあります。
他の呼び方としては、リインボイスやインボイス・スイッチなどと称されています。
スイッチング・インボイスとは、前項でご紹介した三国間貿易のケースでご説明すると、以下のようなイメージで発行されるインボイスになります。
前提:
取引主体者(仲介者)である日本の企業A社は、取引先であるB国との国際取引で、製品をC国のサプライヤーからB国に輸出するものとする。
商流①
C国のサプライヤーと取引主体者である日本の企業A社
“輸出”通関時に使用するインボイスは(α)
商流②
取引主体者である日本の企業A社と取引先のB国
“輸入”通関時に使用するインボイスは(β)
それぞれの相違点
インボイス(α)はC国のサプライヤーからA社に向けて発行されたもの(貨物はC国からB国行き)で、サプライヤーから提示された製品代金の金額が記載されている。
インボイス(β)は取引主体者のA社から取引先であるB国に向けて発行されたもの(貨物はC国からB国行きのまま)で、製品代金にマージンが加算された金額が記載されている。
このようにC国での輸出通関時と、B国での輸入通関時で異なるインボイスを使用する際に、インボイスを切り替える(差し替える)という意味で、スイッチング・インボイスと呼ばれています。
インボイスは貨物の送り状(明細書)としての役割を持っており、輸出・輸入の通関時に必ず必要になる重要書類の一つで、正確性が求められる書類になります。
ですが上記のようなケースで違法な取引の場合を除いて、輸出時と輸入時のインボイスが異なる点については問題ないとされています。
補足として上記のケースの場合、船荷証券(B/L)には荷送人(Shipper)にC国のサプライヤーの社名が記載され、荷受人(Consignee)にはB国の社名が記載されます。
この際、B国の輸入通関時に使用するインボイス(β)の発行元とB/Lの荷送人が異なってしまうので、事前にB/Lの荷送人をA社に変更する、またはC国はA社の代理であるとする表記(C国サプライヤー名 on behalf of A社)とすることで、三国間の関係性を明確にすることができます。
三国間貿易の書類の流れ
三国間貿易においての書類の流れは、通常の貿易(二国間の国際取引)と異なる点がいくつかあります。
理由としては、これまでもご説明したように物品が別の国から送られるという点がポイントになります。
取引主体者(仲介者)が取引先に向けて発行するインボイスなどの書類とは別に、船荷証券や原産地証明書は物品の生産国で発行する必要があるので、決済方法や取引条件に合わせて各書類のやり取りを行うことになります。
これまでご説明してきた例でいうと、サプライヤーであるC国から取引主体者であるA社に一度書類が渡り、A社から取引先であるB国に書類が送られる流れなどがあげられます。
まとめ
今回は三国間貿易における必要書類や輸出規制の一部についてご説明しました。
三国間貿易では通常の貿易とは仕組みが異なるため、必要となる書類や規制の内容が変わってきます。
物流の面においてはリードタイムの短縮などが見込める三国間貿易ですが、書類のやり取りについては三者間で手配する書類が異なり、なおかつそれぞれの関わりを明確にする必要があります。
そのため、よりスピーディーかつ正確な情報のやり取りができる体制や関係を事前に構築することが大切となるでしょう。
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