物流は常に経済活動と連動しており、世の中の需要の変化と供給量に合わせて変動する物量や、対象となる物品の種類にかかわらず、目的地まで無事に貨物を届けることが第一の目標です。
さらにそこから生産・消費までの一連のプロセス全体における物流工程を、いかに効率的かつ最適な手段で行うか、そのために必要なリソースはいかなるものなのか、といった様々な課題に取り組むことで、より良い経済活動を支える重要な役割を担っています。
近年のインターネットの普及やサービスの多様化、貿易などの国際間の取引も主流となっている現代社会では、需要は常に一定ではなく、ちょっとしたきっかけで大きな波動を生み出すことも珍しくないため、需要予測も複雑化しており、供給バランスを保つためのリソース管理も企業にとって大きな課題となっています。
物流業界もまた、需要の変化に合わせた「波動対応」が求められる時代になりつつあります。
今回の物流手帖では、物流における波動対応の概要や対策方法についてご説明していきます。
※本記事は2024年4月時点の情報をもとに作成しています。
物流波動とは
波動とは、波のようなうねり(動き)のことで、物流における波動とは、一定期間の間に波のように増減する物流需要の変化のことを表しています。
物流需要に波が生じる状態となるきっかけは、世界情勢の変化などの大きな要因をはじめ、日本国内でいうと季節や時期などの毎年訪れる期間の影響によるものや、企業単位ではキャンペーンやセール、イベントなどの突発的な事象によって起こる場合など、大小様々な要因によって物流波動が生まれます。
物流需要の変化の振れ幅が大きければ大きいほど波動は大きくなり、それに比例して一時的な物量も増減することが予測できるため、社内に物流部門を有している場合は、適切かつ計画的に自社のリソースを確保しておく必要があります。
例えば近年の出来事でいうと、コロナ禍において世界的にマスクの需要が大幅に増加したことや、巣篭もり需要によるオンラインショッピングや通販などの利用者が著しく増加したことの影響を受けて、物流需要が急激に高まった状態は、物流波動が大きい状態であったといえます。
需要予測について
物流は常に経済活動と連動しているため、各業界の需要の変化による波動を受けやすく、なおかつ受けとる波動も比較的大きい業界であるとされています。
その理由としては、予測ができない災害やパンデミック、または世界情勢の変化によるものや、季節や時期ごとに高まる消費者の需要傾向の変動によるもの、さらに戦略的かつ計画的に実施される企業等のマーケティング活動によるものなどの影響により、物流需要が一時的に高まる傾向にあるからです。
そのため物流業者では、平常時から物流需要のピーク時に合わせて自社の機能にある程度の余力を持たせておくことが一般的ですが、閑散期にはそれらのリソースを遊ばせてしまうことも多々あるため、各社の課題となっています。
波動が起こるまたは波動を起こす事象のメリットは、単純に通常時に比べて一時的に売上が増加するといった点がありますが、そのほかに将来的な需要予測を正確かつ適切に行うためのデータ蓄積に役立てることができる点もあげられます。
波動発生時のデータがあれば、毎年訪れる季節や時期に合わせたシーズン関連の需要の変化などが起きた際、過去のデータをもとにある程度上振れの予測を立てることができるので、事前に必要なリソースを確保するなどの対策を講じやすくなります。
このように適切な波動対応を行うためには、サプライヤーからメーカー、販売店、そして物流業者までが互いに情報共有を行い、常に変動する消費者の需要や社会情勢の変化に柔軟に対応していく必要があります。
物流波動による影響
予期せぬ波動が生じた場合は、物流のみならずサプライチェーン全体のリードタイムに影響を及ぼす可能性があります。
生産が追いつかず販売機会を損失してしまったり、システムに過度な負担がかかることによるサーバーエラーであったり、トラブルの内容も多岐にわたります。
それと同時に物流業務に関しても、想定外の波動が発生した場合は現場やシステムなどに以下のような影響を与えることが予想されます。
・急激に出荷量が増加することによって人為的なミスが誘発される
・検品漏れやピッキングミスなどによる入出荷業務の遅延
・出荷時間やスケジュールが密集することで運搬車両が混雑する
これらの問題が発生した場合は、いかに柔軟かつ迅速に初動対応を行うか、また波動対応時の体制に切り替えられるかが重要なポイントになります。
物流波動への対策方法
物流波動への対策方法は、各社が抱える課題内容によって異なりますが、共通して考えられる方法で第一にあげられる点としては、情報共有と冗長性が重要であるといえます。
波動対応が必要になった際には、まず何がどれだけ足りないのかといった現在の状況把握から着手することが一般的ですが、この段階の情報伝達をいかに素早く・スムーズにできるかよって、初動対応を検討するまでの時間に大きく影響を与えます。
現状把握をスムーズに行うことができれば、過去のデータなどをもとに必要なリソースの分配を適切に行うことができ、不足分については一時的にリソースを拡大させることも可能です。
また波動時の需要予測に基づいて、通常時から自社のリソースに一定の冗長性を持たせておくことで、現状把握から初動対応までの時間を余分に稼ぐことができ、焦らずにより正確な初動対応を行うことができるでしょう。
ただし、波動には閑散期がつきものなので、過度な冗長性は経済的なロスも大きくなるため、事前に入念な検討を行う必要があります。
そのほかには、ピーク時のみ外部のリソースをアウトソーシングする手段も効果的とされています。
物流波動の際に重要な点として「拠点間の輸送距離」があげられますが、例えば、通常時に利用している拠点とピーク時にアウトソーシングする拠点との距離が遠ければ遠いほど、リードタイムが長くなってしまいます。
そのため、納入先のエリアがあらかじめ決まっている場合は、拠点間または輸送ルートからある程度近い距離に、アウトソーシング先を確保しておくことも波動対応の際に有効な手段として考えられます。
まとめ
今回は、物流における波動対応の概要や対策方法についてご説明しました。
物流波動への対応は、様々な課題や予期せぬトラブルなどに直面した際に発揮される企業の対応力であり、自社のブランド力や評価を決定づける可能性もあるため、事前に計画的な準備を行なっておくことが大切です。
アスト中本では、2024年8月に誕生する南大阪の和泉市あゆみ野の大型物流センターにグループ全体でワンフロア約6200坪を取得しています。
関西国際空港や住之江南港からも行き来しやすく、物流センターの近隣には高速ICがあるため、都市部へのアクセスも良好な立地です。
さらに自社倉庫である「あゆみのロジフォレスト」も同エリアに隣接しているため、倉庫間の連携で実現可能なサービスも幅広く、国際貨物から国内の配送・流通加工まで柔軟な対応ができる体制が整っており、物流波動の際の波動対応にも役立てることができます。
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