物流業界におけるドライバーの人手不足問題は現在も続いており、厚生労働省の一般職業紹介状況(令和7年5月分)によると、自動車運転従業者の有効求人倍率は2.46倍に達していることが分かります。
物流は経済活動だけでなく日常生活においても重要なインフラですが、電気やガス、水道といった直接利用するものではなく、例えば、離れた場所にある必要なものを手に入れるための手段であるため、現代社会においてはこうした状況が比較的伝わりづらい業界であるとも考えられます。
今回の物流手帖では、近年より話題となっている2024年問題と物流業界への影響、今後の課題と対策ついてご説明していきます。
参考:一般職業紹介状況(令和7年5月分)について
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_59035.html
※本記事は2025年6月時点の情報をもとに作成しています。
物流の2024年問題とは?
2024年4月から、トラック運送事業者をはじめ建築業や医師などの特定業種または職種に対して、これまで猶予されていた「働き方改革関連法」の適用が開始されました。
これにより時間外労働の上限規制等(トラック運送事業者の場合は時間外労働の上限が休日を除く年間960時間に制限)が適用されるため、それが原因となって起こりうる様々な問題や課題を総称した「2024年問題」は現在も物流業界をはじめ各業界で注目されています。
昔からトラックドライバーの労働時間の長さは問題視されてきましたが、近年、社会全体としてワーク・ライフ・バランスが重視される世の中になりつつあるため、働き方改革の一環として、労働時間短縮を実現させる目的から、時間外労働の上限規制や拘束時間等の改善策が設けられました。
物流業界では現在、ホワイト物流推進運動への働きかけが見受けられますが、これは物流業界で働くトラックドライバーの人手不足問題を大々的に改善するための取り組みで、トラックドライバーの労働環境や労働条件を改善するだけでなく、荷主企業や納品先企業、ひいては消費者に至るまで、物流業界が抱える様々な問題への理解を深め、社会全体で物流の安定化を目指すことを目的としています。
2024年問題による物流業界への影響
働き方改革関連法の適用によって時間外労働の上限規制や拘束時間等が制限されることで、トラックドライバーの労働環境がクリーンになり、身体的負担が軽減される一方、長距離輸送などの比較的輸送時間がかかる運送業務においては、制限された時間内に貨物を輸送できないといった状況に陥ることが危惧されています。
物流業界といっても、現在は物流に関連するサービスの幅も広いため一概にはいえませんが、基本的に物流ビジネスはモノを運ぶことがサービスの根幹すなわち業務の前提としてあるため、輸送時には物理的な距離を人為的に移動する必要があります。
物流コストのうち、最も大きな割合を占めるとされているのが輸送にかかる費用ですが、輸送費は輸送する物量とそれを運ぶドライバーの労働量(労働時間や輸送距離)によって大きく変動します。
すなわち運送事業者にとって輸送費とは売上の基盤であり、今回の規制によってドライバーの労働時間が短縮されることで個々の労働量が低下し、会社全体としても輸送能力が低下することになるので、それに伴った売上の減少が発生してしまう可能性があります。
また時間外労働を行うことで必要な収入を得ていたトラックドライバーにおいては、労働時間の短縮が収入減にもつながるため、現在物流業界が抱えている人手不足問題に拍車がかかってしまうことが懸念されています。
荷主企業や納品先企業にとっても2024年問題による影響は少なからずあるとされており、例えば、依頼先のトラックドライバーの労働時間が制限されることで、これまで通りの輸送体制を維持することが困難になってしまう可能性があります。そのほかに、納期の延長や輸送コストの増加といった、ビジネスに大きな影響を与える問題が発生することも考えられています。
今後の課題と対策のポイント
2024年問題を踏まえて、物流事業者にとっては適正な運賃の確保、荷主企業にとっては物流コスト増への対応が大きな課題となっています。ただし、運賃の価格交渉は一方の主張だけで解決することは困難であるため、法律による間接的な国の介入や、自社で対応できる範囲の対策を講じる必要があるでしょう。
働き方改革関連法の施行から1年以上が経った今、これまでとは違った労働環境や柔軟な働き方の選択といった、人材確保に向けた取り組みによる幅広い層へのトラックドライバーの募集や、積載量に応じた最適なトラックの選択、貨物の特性に合わせた車体タイプの検討といった、限られたリソースでいかに効率的に貨物を輸送するかを模索するなど、様々な対策が行われています。
また今後の大きな変革として、2026年から実施が予定されている「物流効率化法」の改正による規則的措置があげられます。これは全ての物流事業者や荷主に対してすでに実施されている規則的措置(最適化に必要な取り組みを行うように努める)に加えて、一定規模以上の物流事業者や荷主を「特定事業者」として指定し、国に対して中長期計画の作成や定期報告、管理者の選任を義務化する法律です。
これに派生して運送業務の委託を受けている事業者は、元請けの取引先との更なる連携強化が重要となり、自社の新たな体制の構築も必要となることが予想されます。
まとめ
今回は、2024年問題と物流業界への影響、今後の課題と対策ついてご説明しました。
2024年問題やそれに関連する様々な問題や課題は、全てを一度に解決することは困難であるため、まずは現状の把握と問題点の洗い出し、そして新たな体制の構築やシステム導入に必要な予算管理、加えて先々の法改正を見据えた対策と関係企業との連携が重要です。
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