アスト中本の国際物流の拠点のひとつ、タイの現地法人ASUTO GLOBAL LOGISTICS(Thailand) のMANAGING DIRECTOR前浜 盛正さんのインタビューの後編です。
-タイ法人の経営にあたって、前浜さんのこれまでのキャリアが生かされていますか?
私は、もともとIT会社で銀行やホテルのシステム構築を手がけていました。
コンピューターに興味があったわけではなく、恩師の紹介で入社したのですが、負けず嫌いな性格で一番になりたいとがんばりました。
その会社では理論的な考え方や数字の重要性を学びました。
ところが、バブルがはじけて仕事が激減。
何億円の仕事が何十万円の仕事になり稼げなくなってしまいました。
それで、ITから一番遠い職種にと引越会社のドライバーに転職しました。
引越し会社ではいろんなお客様に接し、ずいぶん鍛えられましたね。
引越の見積もりでは、個性が強いというか、無理難題を言う人もいる中、ドライバーならではの工夫をして予算に合わせたプランを提案しました。
1万円を値引きするより、満足していただけるサービスを提供したのです。
結果、営業成績で全店トップの最優秀賞を獲得し、支店長でも全店1位の成績を残すことができました。
-その後、アスト中本グループのネオロジスティクス社でITと現場を融合させた物流改善に取り組みました。
私の強みは、物流の業務改善を現場の中で一緒にやってきたことです。
当時の物流現場にはやんちゃな子たちもいっぱいいましたが、共になってやってきた経験があるので、タイでも現場レベルで目線を合わせて話をすることができているのだと思います。
上から目線で叱るのではなく、逆に甘やかすこともなく、会社の方針が伝わるようにきちんと話をすることを心がけています。
それに、引越会社でも物流現場でも、多くの人に会って話をしてきたので、対応の仕方もだいたいわかります。
嫌いになる人はいないですね。
その人の個性だと思って接しています。
-子どもの頃や学生時代は、どんなふうでしたか?
私は隠岐の島で生まれ育った漁師の息子なんです。
暑い日も寒い日も親父に漁に連れて行かれて自然に揉まれて育ちました。
大漁だと食卓にご馳走が並ぶし、漁がなければご飯と味噌汁だけという日もありました。
ですから、将来のことより今日明日食べることが大事というタイの現地の人の気持ちがわかるんです。
学生時代はバレーボールに専念していました。
今でも、気温40度のバンコクの暑い体育館で、水をカブカブ飲みながらやってますよ。
体育会系なんで、体力はあります。海外勤務は心身ともに強くないとやっていけないですね。
-ふだん仕事で心がけていることはありますか?
IT会社でも引越し会社でも、どうすればNo.1になれるか?と考えました。
すると自分の仕事のやり方に毎日波があることに気づいたんです。
平常心でいつも集中することが大切なんだと...
それからは、気持ちと体調の波がないように心がけています。
また、論理的に考えることと自然体で生きることのバランスをとるように心がけています。
仕事の業績は数字に表れる。
でも数字ありきではない。
業績には働く人の気持ちが入っているので、気持ちの部分も大切です。
-前浜さんご自身のこれからの目標を教えてください。
今年52歳ですが振り返ると、私は人との出会いに恵まれています。
法人設立の時も人材紹介の社長さんや弁護士さんなど、いい人に出会い支えられてきました。
困っているときに答えを持っている人が現れたり、現地スタッフもいい人が集まってきてくれたり。
そして仕事のモットーは「即答」!
スタッフにも質問があれば“すぐに聞いて”と言っています。
即答してすぐに実践してもらう。
そんな風にスピード感を持ってやっていきたい。
日本の会社なら10〜20年かかることを、5年でやってきた自負もあります。
現在は物流システムの構築に力を入れていますが、AIやIoTを取り入れることも考えています。
タイでは新しい技術を取り入れる際に日本のような変な壁がないんです。
昔はこうだったとか、前例を踏襲するとか...
やると決めたら、みんなですぐ実践する。
海外でやっていくには、常にポジティブ思考です。
失敗もありますが、それも成長のプロセスのひとつ、次の糧と考えます。
仕事もバレーボールもポジティブに、タイの生活を楽しんでいますよ。
周りから「熱い男」って言われるんですが、それは24時間365日変わらないですね。
海外事業の道筋を作っていくのが私の使命だと思っています。
誰もやっていないことに挑戦して、パイオニアとして時代を作っていきたいです!
-タイ現地法人としての今後の展望を聞かせてください。
先行の日系企業は40年前からタイで事業をしていますが、うちはやっと6年です。
ですが、先行企業がやっていないシステムを構築していきます。
お客様へのサービスも人材育成も、オンリーワンを目指してアスト中本ならではのカラーを出していきたいですね。
本社は創立100年ですが、タイも100年以上続く会社にしたいです。
タイは後進国ですが、資源も多く、隣国と陸続きでキャパも広い。
ですのでアスト中本のグローバルの拠点として考えています。
なにより国家戦略で「タイランド4.0」というサービス産業の成長を見据え、道路や交通網のインフラを整えている真っ只中です。
国の政策の流れに乗って、タイそして東南アジアで必要とされる企業に成長していきたいですね。
-人材育成もますます必要です
タイの現地スタッフはどんどんレベルアップしていますよ。
みんな日本が好きで日本に研修に行きたいと思っています。
本社のレベルの高い仕事を自分の目で見て、複雑な作業もできることに気づいてほしい。
それをタイに持って帰ってお手本となってもらいたいです。
基盤がしっかりできると、拡大していくことができますから。
タイはこの5年で大きく変わりますよ。
経済発展によって余暇を楽しむようになり、サービス産業もどんどん成長しています。
うちの会社もゆくゆくは、現地の人たちで運営してほしい。
タイの人たちが本当の意味の笑顔になるように、存在価値を高めていきたいですね。
-タイでの経営手法やシステムは、グローバル・ロジスティクス事業のモデルになりますね
日本は伸び悩んでいる部分もありますから、サービス業はなんぞやと初心に帰る必要があると思います。
顧客満足度を高めるには、やはりハートが大切です。
気持ちの部分と数字との融合です。
タイに学ぶことも多いです。
たとえば、タイ法人のホームページは、AIを活用して毎月結果を分析して、どんどんリニューアルしています。
そうすると、てきめんに問い合わせが増えて新規取引につながるようになってきました。
新規開拓に時間をかけるのではなく、問い合わせがあったお客様の求める提案に時間を使う。
限られた人材と時間で成果を上げるのが、これからの営業の形だと考えます。
逆輸入で日本でもそういうシステムを入れていきたい。
過去の実績を追いかけるより、時代にあったシステムを作ることが大切ですね。
-今日は、多岐にわたっていろいろなお話をありがとうございました!
常にポジティブで、熱いハートを持ちながらクールに理論的に現状分析をし、挑戦を続ける前浜さん。話を聞いて、このような日々の取り組みが当社のグローバル・ロジスティクス事業を支えているのだと実感しました。