在庫管理は事業者にとって非常に重要な項目で、時代の影響に大きく左右される消費者ニーズに合わせた、適正な在庫管理を行うことは、常に大きな課題となっています。
過去の高度経済成長期では、消費者の生活環境が大きく変わったことで社会全体の需要と供給が活発化し、様々な企業やメーカーによる大量生産が行われていきました。
この時代は小品種大量生産が中心だったと言われており、倉庫や物流センターではいかに大量な商品を保管するかに重点が置かれていました。
その後は時代の変化とともに、多品種少量生産の顧客重視の時代へとシフトチェンジし、商品の差別化やブランド思考といった「付加価値」を求める時代へと突入しました。
こうした変化は流通過程にも大きな影響をもたらし、倉庫や物流センターでは商品在庫の保管機能に加えて、在庫管理やシステム、流通加工といった様々な機能やサービスが導入されたことで、個々で取り扱う情報量が一気に増加し、いかに効率良く供給を行うかが重要視されるようになっていきました。
今回の物流手帖では、現在注目されている在庫管理の手法の一つであるVMIについてご説明していきます。
※本記事は2024年5月時点の情報をもとに作成しています。
VMIとは
VMIはVendor Managed Inventoryの略で、ベンダー主導型在庫管理を意味しています。ベンダー主導型とは、ベンダーすなわち売り手側が主体となって在庫を管理する運営方法で、バイヤーすなわち買い手側が必要数を発注して在庫管理を行う体制とは大きく異なります。
従来の基本的な在庫管理の流れは、バイヤー側が自社の保有する在庫と実際の売れ行きを照らし合わせながら、必要となる在庫数を検討した上でベンダー側に発注する方法が一般的とされており、その際に発生する業務としては、販売予測と在庫数の管理、棚卸し、納入スケジュールの管理、ベンダー側への発注業務、次回納品分の受け入れ態勢の準備や調整など様々な業務があります。
適切な在庫管理を行うことは、事業者にとって常に大きな課題としてのし掛かっているため、必要となるリソースの負担も大きく、場合によっては直接的に売上につながる販売業務にかけるリソースとのバランス調整が頭を悩ますきっかけにもなり得るといえます。
VMIでは、これらの在庫管理に付帯する業務をベンダー側が一任し、お互いが定めたルールや体制、契約のもとにバイヤー側の在庫のコントロールを行います。
また在庫の所有権の移転時期も通常とは異なり、バイヤー側が消費する際に所有権が移転される点も大きな違いとしてあげられます。
VMI導入のメリット
バイヤー側(買い手側)がVMIを導入するメリットとして、まず最初にあげられる点は「在庫管理にかかる自社の業務負担を軽減できる点」です。
在庫管理にかかる業務負担は、生産から販売までの流通過程においても比較的大きく、商品点数が多い場合はさらに煩雑な作業も増えるため、その部分をベンダー側(売り手側)が担うことで、その他の業務に注力することができます。
また、発注ミスや在庫切れによる欠品で、販売機会を損失するなどの在庫管理業務に関連するリスクマネジメントの負担も軽減できます。
次に考えられるメリットとしては、余剰在庫や滞留在庫を抱えるリスクが少なくなり、管理費や保管先の倉庫の費用や維持コストなどの在庫管理にかかる費用を抑えることができる点です。
またVMI導入のメリットは、バイヤー側だけでなくベンダー側にとってもメリットがあります。ベンダー側は、バイヤー側の売れ行きや在庫状況をいち早く把握することができるので、納期管理がしやすく生産計画が立てやすいため、在庫状況に合わせて必要数を生産することができるといったメリットがあります。
VMI倉庫
VMI倉庫はVMIのための倉庫のことで、最近では物流倉庫や物流センターとしての機能を持ち合わせた物流拠点がVMIによる供給体制を導入しているケースもみられます。
従来のバイヤー側(買い手側)が在庫管理をする方法の場合は、在庫調整のための発注を各メーカーに個別に行う必要があり、納品スケジュールの管理や入庫検品といった業務もバイヤー側が対応する必要があったため、手間や管理コスト等の負担がありました。
一方、VMIの場合はベンダー側(売り手側)が主体となって在庫管理を行うため、自社で手配したVMI倉庫に各メーカーから必要な物資を集約し、保管しておくことができます。
そのためバイヤー側への輸送も一度に行なうことが可能となり、輸送コスト削減につながるだけでなく、ベンダー側も在庫状況や生産計画を把握しているため、入出荷管理がしやすいといったメリットがあります。
まとめ
今回は、現在注目されている在庫管理の手法の一つであるVMIについてご説明しました。
VMIは、バイヤー側(買い手側)だけでなくベンダー側(売り手側)にもメリットがある在庫管理の方法で、サプライチェーン全体の供給体制の効率化に期待が持てる仕組みです。
VMI成功のカギは、双方の連携と正確な情報共有が必須条件となります。
また物流機能を有したVMI倉庫では、納品段階の引き上げのために流通加工も請け負う場合もあるため、さらにスムーズかつ最適な供給体制の構築に繋げることができます。
流通加工について、詳しくは以下の記事でご説明していますので、ぜひご覧ください。
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