近年の国際貿易において、荷主企業や物流事業者が直面している様々な問題やそれらに起因する課題は、年々、複雑さを増しています。
国際情勢の変化による輸送ルートの混乱や、主要各国の通商政策の変更に伴う追加関税等のリスク、そして為替相場の急激な変化など、国際物流が支えるグローバル・サプライチェーンを取り巻く環境は、先が読みづらく不安定な状況が続いています。
こうしたリスクを回避するために、複線化(マルチソースやチャイナプラスワンなど)や、地域化(ニアショアリング)、または国内回帰など、
主に生産体制や構造を改革する対策が進められています。
また、その他には在庫管理の適正化についても見直しが必要とされています。
例えば、これまではコスト削減や作業効率化の観点から、在庫を極限まで減らす「ジャストインタイム」での生産方式が選ばれていました。
ですが、予期せぬ物流の遅延や規制変更が相次ぐ現在は、万が一の事態に備えて、在庫をあらかじめ国内の倉庫や港湾エリアなどに確保しておく「ジャスト・イン・ケース」にシフトチェンジすることが、
大手企業をはじめ、海外の物流メディアなどでもトレンドとして扱われています。
こうした背景から、国際貿易の現場で改めて注目を集めているのが「保税地域」です。
今回の物流手帖では、保税地域の概要とその活用方法、そして令和8年6月に施行される関税法改正のポイントについて解説します。
保税地域の概要と保税制度について
保税地域とは、外国から到着した貨物で輸入許可を受ける前のもの、または輸出許可を受けた貨物、すなわち「外国貨物」を一時的に保管するために、
国から指定または許可された特別な地域のことです。
輸入の場合は、到着した貨物を保税地域に搬入後、通関手続きを行って、関税や消費税等の納税が完了した時点で、
輸入許可を受けた「内国貨物」へと切り替わります。
保税地域には以下の種類があり、それぞれ機能や目的、蔵置期間などが異なります。
・指定保税地域
・保税蔵置場
・保税工場
・保税展示場
・総合保税地域
外国貨物は、原則として、保税地域以外の場所に留めておくことができず、
また許可がなければ外国貨物のまま移動(運送)させることができません。
理由は、外国貨物を税関の監督下に置くことで、必要な審査や検査を実施し、貿易の秩序の維持や関税等の徴収を正しく行うためです。
その一方で、外国貨物のままの状態で、倉庫での保管(蔵置)や加工・製造、展示、運送等ができるようになれば、取引上の便利さが増し、
貿易の振興や国際的な交流の発展にもつながるため、これらを「保税制度」として法の下で管理することによって、双方の目的を達成しています。
保税蔵置場の活用方法について
保税制度を活用することで、保税地域(保税蔵置場)に対する認識を、単なる輸出入の手続きのための一時的な保管先としてだけでなく、
近年の不安定な国際情勢の余波を考慮した上での予備在庫を確保する物流拠点としての期待が高まっています。
保税蔵置場には期間に制限がある(貨物搬入から3ヶ月、蔵入承認後は2年)ものの、蔵置期間中は関税や消費税が課されないため、
予備在庫の確保によるキャッシュフローの悪化を軽減することができます。
それだけでなく、貨物の点検や改装、仕分けやラベリングに加えて、見本品としての展示や簡単な加工(税関長の許可が必要)も行うことも可能です。
また、インランド・デポ(内陸部の保税蔵置場)を利用することで、
輸出または輸入通関後のリードタイム短縮にも効果が期待できます。
留意点として、保税蔵置場は通常の倉庫と同じように保管料が発生するため、関税等の支払い金額と、
蔵置期間中にかかる保管料とのバランスを事前に把握しておく必要があります。
【令和8年6月施行】関税法改正のポイント
容を解説しました。
しかし、税関への各種手続きや輸出入許可の申請・納税にかかる手続き等(通関手続き)は、専門的な知見と経験を要するものとなっているため、
自社に専門の部署がない限り、それらをパートナーに委託することが必要不可欠になります。
パートナーを選ぶ際には、様々なビジネス要件をもとに委託先を判断することも大切ですが、コンプライアンスに対する意識の高さも重要になります。
特に今年(令和8年度)は、改正物流効率化法をはじめ、法改正の動きが顕著なため、
荷主企業や物流事業者も今後の動向について注意しておく必要があります。
令和8年6月1日に施行が開始される関税改正法(保税関係)では、指定保税地域を除く、
税関長から許可を受けた保税業者(倉主を含む)に対して、以下の改正項目が追加されました。
①保税地域の業務を正しく遂行するための業務改善命令の創設
②従来の社内管理規定に代わって、新たに関税をはじめとする法令遵守のための手順や体制整備に関する規定の義務化
③保税地域から貨物を搬出する際の確認義務の創設
④保税地域への搬入停止や許可取消処分等の対象に「①」の業務改善命令への違反を追加する等の改正
このように今後は保税業者の自主管理方式による、従来の社内管理規定(コンプライアンス・プログラム)から、
より厳格な管理体制の整備が義務付けられます。
保税地域の需要(特に輸入貨物)が高まることで、これまで以上に重要な役割を担うようになった保税業者との更なる連携は、
円滑な貿易取引の推進や、サプライチェーンを維持するためにも、改めて注目すべき重要なフェーズとなっています。
まとめ
今回の物流手帖では、保税地域の概要とその活用方法、
そして令和8年6月に施行される関税法改正のポイントについて解説しました。
国際情勢の変化に伴い、これからの国際貿易では、万が一の事態に備えた予備在庫の確保と、
確実な法令遵守(コンプライアンス)の両立が求められます。
そのなかで保税蔵置場の活用は、関税等の支払いの一定期間の留保と、保管コストをコントロールすることで、
サプライチェーンの維持・強化を図るための戦略的な拠点となります。
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