物流業界において、2026年4月は一つの大きな分岐点となりました。
その理由は「改正物流効率化法」の完全施行によって、荷主や物流事業者に対し、これまでにはなかった「荷待ち・荷役時間の短縮」が法的な義務として課されることになったためです。
(義務化の対象は一定規模以上の「特定事業者」のみですが、それらを含むすべての荷主・物流事業者に対しても努力義務が課されています。)
こうした背景から今、改めて注目が集まっているのが「流通加工(物流加工)」です。
両者はほぼ同義として扱われますが、厳密にはその焦点が少し異なります。
流通加工は、ラベル貼りやセット組み、軽微な組立など、商品に付加価値を与えて販売できる状態にする「商流」の側面が強い言葉です。
対して物流加工は、検品や梱包、仕分けなど、保管・輸送を円滑にするための「物流機能」としての側面に特化した付帯作業を指します。
実務上はこれらを総称して「流通加工」と呼ぶのが一般的ですが、今回の法改正への対策としては、後者の「物流加工」としての役割が重要になります。
これまで、倉庫や物流センターにおける付加価値サービスとして位置づけられてきた流通加工(物流加工)ですが、これからの時代は「トラックドライバーの拘束時間を削減し、物流を円滑に遂行するための戦略的プロセス」の一環として、これらの機能を有効に活用していく必要があります。
今回の物流手帖では、2026年4月の法改正に合わせた、新たな流通加工(物流加工)の在り方について解説します。
※本記事は2026年4月時点の情報をもとに作成しています。
改正物流効率化法の背景とこれからの対策
物流効率化法において、荷主や物流事業者に求められているのは、トラックドライバーの拘束時間の短縮と、運送車両の積載効率の向上です。
具体的に、前者については「荷待ち・荷役時間を原則2時間以内(1回の受け渡しごとの努力目標としては1時間以内)」に収めること、後者については「国内全体の車両で積載効率を44%まで向上させる」ことがガイドラインで示されています。
(本記事では、前者の「時間短縮」に関する項目にフォーカスして解説します。)
ここで改めて向き合わなければならないのが、これまでは物流業界の商習慣として見過ごされてきた、ドライバーによる倉庫内や納品先での付帯作業の実態です。
国が告示する「物流効率化の推進に関する基本的な方針」でも指摘されている通り、多くの現場では、ドライバーの長時間の荷待ちに加え、契約外の付帯作業(荷下ろし後の仕分け、ラベル貼り、検品、棚入れなど)が、現場での長時間滞在を引き起こす要因となっています。
法改正が完全に施行された今、こうしたドライバーの負担を「現場の苦労」という曖昧な認識で済ませるのではなく、荷主や物流事業者にとっての「法令違反リスク(勧告・命令の対象)」に直結するという、危機感を持った認識に切り換えることが重要です。
したがって、これらの付帯作業の主体をドライバーから「倉庫側の流通加工(物流加工)」へと移管させることが、コンプライアンス遵守に向けた第一歩であり、新たな物流環境に適応するための対策の一つといえるでしょう。
流通加工(物流加工)を委託するメリット
流通加工(物流加工)を倉庫や物流センター側で完結させる仕組みを構築する場合、自社の生産工程や運送計画に柔軟に対応できるパートナー(委託先)を選定する必要があり、一見するとコストが嵩(かさ)むように感じるかもしれません。
しかし、トータルでの物流コストやリスク管理の観点からは、極めて高い投資対効果(ROI)に期待が持てます。具体的なメリットとして、主に以下の3点があげられます。
①ドライバーの労働時間の短縮
配送先や荷受先での仕分け、ラベル貼り、検品、棚入れなどの付帯作業を倉庫側の流通加工(物流加工)へと移管することで、ドライバーは積み込みや荷下ろしといった本来の運送業務に注力できるようになります。これにより、1運行あたりの回転率が向上し、深刻化する車両不足への有効な対策にもつながります。
②荷待ち時間の短縮
荷待ちが発生する要因は、拠点の立地条件や設備の制約など多岐にわたりますが、荷役や付帯作業の停滞も大きな要因の一つです。トラック予約受付システムの導入に加え、マテリアルハンドリングの活用や物流業務のアウトソーシング化によって、ドライバーの滞在時間を物理的に削減し、負担を大幅に軽減することができます。
③コスト分離による業務実態の明確化
運賃と荷役料(流通加工賃)を明確に切り分けることで、付随的なサービス作業を排し、自社の物流コストを精緻に把握できるようになります。これは、法改正によって選任が義務化された物流統括管理者(CLO)にとっても、実効性のある中長期計画を策定する上で不可欠なデータとなります。
物流パートナーの新たな選定基準
多くの荷主企業において、これまでご紹介したような物流体制を自社のみですべて構築・運用することは、リソースの観点から容易ではありません。
そのため、信頼できるパートナー(委託先)へ業務を移管し、最適な物流ネットワークを構築することが一般的です。
パートナーを選定する際、コスト面での適合性は重要な要素ですが、これからの物流環境に即応できる体制が整っているかという点には、より一層注目すべきでしょう。
具体的には、「改正法に基づいた作業時間の記録・管理ができるか」「物流データの標準化に対応しているか」「CLOへの報告業務を支援する仕組みがあるか」など、法改正への対応力(ガバナンス能力)が重要な選定基準となります。
また、流通加工(物流加工)においては、単なる作業の外注という枠を超え、顧客企業の物流部門の一部を担うような、より細やかな対応へのニーズが高まっています。
例えば、ピース(バラ)単位でのピッキングやセット組み、梱包形態・サイズの標準化、定温管理などの特殊な環境下での加工、さらにはパレットへの積み付け・積み替え作業や、製造工程の一部(組み付け・組み立てなど)の委託など、アセット型の3PLを保有するパートナーへの外注は、有力な選択肢となるでしょう。
まとめ
今回の物流手帖では、2026年4月の法改正に合わせた、新たな流通加工(物流加工)の在り方について解説しました。
これまでご紹介したように、流通加工(物流加工)は単なる付加価値サービスから、ドライバーの拘束時間を削減するための「戦略的プロセス」としての認識が高まりました。
現場の付帯作業を倉庫や物流センター側へ移管し、運賃と荷役料を明確に分離することは、コンプライアンス遵守と物流効率化の第一歩です。
今後は法改正への対応力に加え、細やかな流通加工(物流加工)が可能なパートナーと協力し、物流体制を最適化していくことで、新たな環境へと適応していくことができるでしょう。
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