現在の日本では、日常的に国際的な人の行き交いや貿易が頻繁に行われているため、
ビジネス面においても海外で行う展示会やイベント等の催しなどが開かれることも増えてきています。
その際に必要となる展示品や機材、職業用品などを全て現地で調達(レンタルなど)
するには、信頼できるパートナーがいる場合は問題ありませんが、
そうでない場合は適正価格での取引やその他にも様々なリスクが懸念されます。
通常、日本から海外へ物品を持ち出す(個人利用の荷物などを除く)場合は、
通関手続きが必要になりますが、一時的な物品の持ち運びには
「ATAカルネ」を利用した通関手続きが便利です。
ただし、ATAカルネの利用は、持ち込み先が
ATA条約の加盟国であることが必須条件となります。
今回の物流手帖では、ATAカルネの加盟国と
デジタル化についてご紹介します。
※本記事は2025年9月時点の情報をもとに作成しています。
最新の加盟国一覧
ATAカルネとは、通関手帳のことで、輸出または輸入の際に税関で行う通関手続きを簡略化し、
さらに免税の適用を受けることができる通関用の書類です。
冒頭でもご紹介したように、通常の輸出または輸入で利用するものではなく、
持ち帰ることを前提とした一時的な物品の輸出入の際に利用することができます。
また、ATAカルネの利用は、物品を持ち込もうとする国がATA条約に加盟していることが必須条件で、
現在約80カ国の以下の主要国が条約に加盟しています。
カルネ加盟国
①アジア
インド・インドネシア・シンガポール・スリランカ・タイ・韓国・中国・
香港・パキスタン・フィリピン・ベトナム・マレーシア・モンゴル
②北アメリカ、南アメリカ
アメリカ・カナダ・チリ・ペルー・メキシコ
③ヨーロッパ(EU加盟国)
アイルランド・イタリア・エストニア・オーストリア・オランダ・キプロス・ギリシャ・クロアチア・スウェーデン・スペイン・スロバキア・スロベニア・チェコ・デンマーク・
ドイツ・ハンガリー・フィンランド・フランス・ブルガリア・ベルギー・
ポーランド・ポルトガル・マルタ・ラトビア・リトアニア・ルーマニア・ルクセンブルク
④ヨーロッパ
アイスランド・アルバニア・アンドラ・イギリス・カザフスタン・スイス・セルビア・
ノルウェー・ベラルーシ・ボスニア ヘルツェゴビナ・モルドバ・モンテネグロ
⑤アフリカ
アルジェリア・コートジボワール・セネガル・チュニジア・
マダガスカル・モーリシャス・モロッコ・南アフリカ
⑥中東
アラブ首長国連邦・イスラエル・イラン・カタール・サウジアラビア・
トルコ・バーレーン・レバノン
⑦その他
オーストラリア・ニュージーランド・マカオ・ジブラルタル・北マケドニア
⑧発給停止中
ウクライナ・ロシア
⑨その他(SCCカルネ)
台湾
2023年12月には、イスラエル向けのカルネ発給についての注意喚起が発表され、
2024年の年末には、新たにカルネ発給開始国の追加が発表されました。
カルネの発給は、新たに発給が開始される国もあれば、
国際情勢によって随時発給を停止または変更されることがあるので、
利用を検討する前に「日本商事仲裁協会(JCAA)」
の公式サイト等で最新の発給状況を確認しておきましょう。
参照:日本商事仲裁協会(JCAA)
https://carnet.jcaa.or.jp/
カルネ利用の際の注意事項
ATAカルネは外国への一時輸入の際に必ず利用しなくてはいけない
書類ではありませんが、カルネを利用することで、
通関に必要な書類の作成や申請等の手続きにかかる時間と
労力を大幅に削減することができます。
ここではATAカルネを利用する際の注意事項について、
いくつかご紹介させていただきます。
・持ち込み先の国によって用途や物品に制限がある
原則としてATAカルネの利用は、対象となる物品が各国の法律上で輸出入が可能なものであることと、
輸出時(カルネ申請時)と同じ状態で、なおかつ有効期間内(発給から1年間)
に発給国に持ち帰る必要があります。
輸出先で消費するものや、修理または改造等を目的とした一時輸出には利用できません。
さらに国によっては、用途や物品に制限がかかっていますので、申請前に確認をしておきましょう。
・台湾への持ち込みまたは経由の際には注意が必要
日本と台湾間は民間協定に基づいて、SCCカルネが発給されます。
SCCカルネはATAカルネと同時に利用することができず、
日本と台湾の一往復のみで利用可能なカルネになるので、
日本から台湾、続けて台湾から他国へ輸出し、最終的に日本へ戻る場合などには、
どちらか一方の国(台湾の場合はSCCカルネ、ATA加盟国の場合はATAカルネ)
でカルネを利用し、それ以外は通常通りの通関手続きを行います。
持ち込み先の国数や、どのように利用するのかなどによって注意事項も細かく分かれるため、
ATAカルネを利用する際は、全体の輸送プランを検討する段階から、
利用登録やカルネ申請のために必要な準備を進めておくと良いでしょう。
デジタルカルネについて
現在、日本で発給されるATAカルネは紙ベースの媒体でデジタル化されておらず、万が一、
紛失してしまった場合は再度発給する必要があり、持ち込み先の国によっては、
再発給のカルネが認められない(発給国の税関の輸出記録が確認できないなどの理由で)場合もあります。
ATAカルネのデジタル化(eATA)は、国際貿易が盛んな今の時代に必要な変革として、
ICC(国際商業会議所)およびWCO(世界税関機構)を中心に、
移行プロジェクト(Digital ATA Carnet Pilot Project)が段階的に実施されており、
2028年以降の実用化に向けて、プロジェクト参加の筆頭国や港湾、空港、協力企業などが試験運用を進めています。
eATAの導入が完了することで、ATAカルネの発行に必要な紙やインクなどの資源を節約でき、
管理面においても紛失リスクの軽減や手作業によるエラーの削減が期待できるため、
今後のプロジェクトの発展に期待が持てます。
まとめ
今回は、ATAカルネの加盟国とデジタル化ついてご紹介しました。
ATAカルネの利用は、定められた用途や物品を一時的に外国へ輸出入する際に、
とても便利になる書類ですので、
これまで海外での展示会やイベント等で利用されていない場合や、これから行う場合は、
積極的に導入を検討することをおすすめします。
関連記事として、
以下の記事では、カルネでの国際輸送で事前に準備しておくと良い点について解説していますので、
ぜひご覧ください。
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