貿易を行う際にどのような輸送手段で貨物を運送するかは、仕向地や契約内容、その他の条件などによって様々ありますが、なかでも緊急性の高い貨物や季節ものの商品、また高額な商品や生鮮品などは、輸送時間を短縮する必要があるため、航空輸送で運送されることが多くあります。
今回の物流手帖では、航空輸送の運送契約を行う際に発行される、Air Waybill(エアウェイビル)についてご説明していきます。
※本記事は2025年1月時点の情報をもとに作成しています。
Air Waybill(エアウェイビル)とは?
Air Waybill(エアウェイビル = 略して「AWB」と記載されることもあります)とは、航空運送状(航空貨物運送状)のことで、荷送人と荷受人との間で貨物の航空輸送の運送契約が締結されたことを証明する書類です。
エアウェイビルは、国際航空運送の安全性の向上や秩序を保つための国際的な管理機構であるIATA(The International Air Transport Association:国際航空運送協会)の規則に基づいて発行される書類で、航空会社によっては呼び名が少し異なる(Shipment Waybillなど)場合もあります。
主な機能や役割は、航空輸送の運送契約書や貨物の受領書としての役割のほかに、荷受人が税関に輸入申告をする際の資料としても活用されます。
エアウェイビルの書面には、①荷送人や荷受人の情報や②運送契約に関する情報、③貨物の品名や数量、重量などの詳細や④追跡番号、⑤運賃や支払い方法、⑥輸送時の注意点や指図、⑦貨物の取り扱いに関する情報などが記載されています。
書類のフォーマットは、各航空会社が提供するフォーマットを使用する場合と、航空貨物代理店によってはIATAが制定する汎用型のニュートラル・エアウェイビル(NAWB)を使用する場合があります。
エアウェイビルの特徴
エアウェイビルは、海上輸送で言うところのB/L(Bill of Lading:船荷証券)と同じく、貿易における運送契約の証拠書類ですが、B/Lと違って有価証券ではないため、書類そのものに貨物の所有権を法的に表す機能はありません。
そのため書面に記載される内容は、荷受人を指定しない指図式(To order of Shipper や To order)ではなく、荷受人(Consignee)の情報を指定した記名式で記載され、発行様式は運送人が貨物を受け取った段階で発行される受取式で発行されます。
記載項目で注意すべき点について
エアウェイビルには、Declared Value for Carriage(DVC)といった記載項目があります。
これは運送人である航空会社に事前に申告する貨物の価額(価値)のことで、万が一、運送中の事故やトラブルなどが原因で貨物が紛失または破損した場合に、航空会社は申告された金額に基づいて賠償金額を支払います。
賠償金額の設定は、DVC欄に記載された金額が最高責任上限額となるため、申告額が高ければ賠償金額の上限も高くなり、申告額が低ければ賠償金額の上限も低くなります。運送する貨物の価値が低く、金額が把握できない場合は、無申告(No Value Declared = 略して「NVD」)と記載することも可能です。
NVDで申告した場合の運送人が負担する責任額は、各航空会社によって定められた規定金額、もしくはIATAの約款に記載されている金額をもとに定められています。
IATAの約款は、国際航空運送における運送人の責任や損害賠償について定められたモントリオール条約の内容が反映されており、貨物1kgあたりの限度額(SDR)は、国際情勢に合わせて随時見直しがされています。
SDRは国際通貨基金が定める特別引出権のことで、世界共通の通貨単位を表しており、正式名称はSpecial Drawing Rightsを意味します。レートは各国の通貨の変動に合わせて毎年変更されます。
Declared Value for Customsとの違い
Declared Value for Customsの項目に記載する金額は、通関申告のための価格(販売価格や一般的な市場価格に基づいた金額)を記載する必要があるため、上述のDVC欄に記載する金額とは根本的な目的が異なります。
DVC欄に記載する金額は、運送人である航空会社の賠償責任の限度額を決定するために申告する金額であるため、運送中の事故やトラブルが発生するリスクを考慮して、場合によっては金額を高めに申告する(すなわち賠償金額の上限を引き上げる)ケースもあります。その場合は、限度額に応じて各航空会社が規定する従価料金が運賃に加算されます。
原則として、Declared Value for Customsに記載する価格は、正確な金額を記載する必要があるため、一般的にはインボイスなどの添付書類に記載されている金額を参照します。
万が一、虚偽の申告を行った場合、または申告額が実際の貨物の価値と大きく乖離していると疑われる場合は、税関での審査も厳しくなり、貨物の支払い証明や購入時のレシートのコピーなどの追加資料の提出を求められる場合があるので注意が必要です。
エアウェイビルの種類
エアウェイビルには、マスター・エアウェイビル(Master Air Waybill = 略して「MAWB」)とハウス・エアウェイビル(House Air Waybill = 略して「HAWB」)があります。
小口の貨物を航空輸送で運送する場合は、同じように小口の貨物を運送する複数の荷主から貨物を集めて混載し、一つの大型貨物として航空会社に運送を依頼します。これらは混載業者によって一括で管理され、個々の荷主は混載業者との間で運送契約を交わします。
この場合、混載業者が荷主にとっての運送人となるため、混載業者がそれぞれの荷主に向けてエアウェイビルを発行します。一方、航空会社にとっては混載業者が運送契約の対象となるので、航空会社は混載業者に向けてエアウェイビルを発行します。
これら二つのエアウェイビルを区別するために、航空会社が混載業者に向けて発行するものをマスター・エアウェイビル、混載業者が荷主に向けて発行するものをハウス・エアウェイビルと呼称しています。
まとめ
今回は、Air Waybill(エアウェイビル)についてご説明しました。
エアウェイビルは、航空輸送で貨物を運送する際に発行される重要な書類で、エアウェイビルには航空輸送の形態に特化した機能や役割があります。
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