海外の取引先と貿易を行う際、基本的に現金で支払いを行うことはないので、銀行を介して買い手から売り手へ金銭の支払いが行われます。
この場合、外国為替でのやり取りになるので、為替変動によるリスクが生じる可能性を頭に入れておく必要があります。
海外との取引実績がある国内の商社などを介して、間接的に取引を行う場合(仲介貿易)は、円建てで取引をするので為替変動によるリスクはないものの、仲介手数料などが発生するので、一概にどちらが良いかはケース・バイ・ケースといえるでしょう。
為替変動のリスクとは別に、初めて取引を行う相手先の場合は、代金回収が円滑にできるかや、貨物そのものが無事に届くかなどの様々なリスクを考慮する必要があります。
そうした不安を払拭する決済方法の一つに、L/C決済があります。
今回の物流手帖では、L/C決済の概要と流れ、その他の決済方法についてご説明していきます。
※本記事は2023年7月時点の情報をもとに作成しています。
L/C決済とは
L/CとはLetter of Creditの略で、日本語では信用状を意味します。
信用状(Letter of Credit)とは、買い手の依頼によって、銀行(買い手側の)が代金の支払いを保証してくれる保証状のことです。
信用状の発行には手数料がかかるものの、信用力の高い銀行が輸入者に代わって代金の支払いを確約してくれるため、安心して取引を行うことができます。
ただし、信用状発行のための与信審査や必要書類の提出から照合など、諸々の確認作業が発生するため、貨物の引取りまでに時間がかかります。
売り手側は、荷為替手形(B/Lが添付されている為替手形)と船積書類などの必要書類を取引先の銀行に持ち込むことで、代金をスムーズに受け取ることができます。
L/C決済の流れ
L/C決済の一般的な流れは以下の通りです。
1、売買契約を締結する
2、買い手側(輸入者)は取引銀行に信用状の発行依頼を行う
3、売り手側(輸出者)の取引銀行に信用状が送付される
4、輸出者に通知が届く
5、輸出を行う
6、取引銀行に手形や船荷証券などの買取依頼を行う(輸出者)
7、取引銀行から代金が支払われる(輸出者宛)
8、輸入者の取引銀行に手形や船荷証券が送付される
9、取引銀行から輸入者に手形が呈示される
10、輸入者は取引銀行に代金を支払う
11、取引銀行から船積書類を受け取る
12、輸入者は船会社に船積書類を提出する
13、輸入者に貨物が引き渡される
その他の決済方法
L/C決済以外で、貿易取引における代金決済の手段には、以下のような方法があります。
海外送金による決済
海外送金による決済 とは、売り手が指定する銀行に買い手側の銀行からが代金を送金する方法です。
前払いや後払い、または一部を前払いする方法などがあります。
海外送金による決済は、手続きなどが簡易な点や銀行側からの手数料も他の決済方法と比べると安く抑えることができるため、利用されるケースが比較的に多い決済方法です。
銀行間の送金指示を電信で行う電信送金の場合は、T/T(Telegraphic Transfer)といい、送金指示を郵便で行う普通送金は、M/T(Mail Transfer)といいます。
小切手の場合は、D/D(Demand Draft)と表記されます。
この場合、船積書類が銀行を経由することがないので、貨物の引取りもスムーズに行うことができます。
D/P、DAによる決済
L/C決済とは違って信用状を発行せずに、荷為替手形をもとに決済を行う方法です。
売り手側は荷為替手形と船積書類を銀行に提出し、買い手側への代金取立てを依頼します。
この際、銀行は荷為替手形を買い取るか、取立て扱いにして買い手側からの代金回収後に料金を支払うかを判断します。
買い手側は、取立て銀行から呈示された荷為替手形をもとに代金を支払い、船積書類を引き取る、D/P(Documents against Payment)か、期日の代金支払いを約束して船積書類を受け取る、D/A(Documents against Acceptance)のどちらかで取引を行います。
電子決済サービス
個人輸入や少額輸入の場合は、電子決済サービス(クレジットカード、デビットカード、電子マネーなど)を用いた決済方法も多く利用されています。
まとめ
今回はL/C決済の概要と流れ、その他の決済方法についてご説明しました。
他国の企業と取引を始める際には、どのような決済方法で取引を行うかの事前確認や情報収集、相手先の信用調査などを入念に行うことが大切です。
また、貿易の際にかかる費用についても、あらかじめ確認をしておくことで、概算費用の算出にも役立ちます。
貿易にかかる費用については、以下の記事でご紹介していますので、ぜひご覧ください。
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