世界の物流事情

物流DXとは?物流DX推進の背景から考える実現のためのポイント

昨今、物流業界では、2024年問題や2025年4月から新たに施行が始まった改正物流効率化法など、物流の効率化を図る取り組みが活発化しています。物流DXもそのうちの一つとして、現在も注目されています。

今回の物流手帖では、物流DX推進の背景やDXの概念、実現のためのポイントについてご説明していきます。

※本記事は2025年7月時点の情報をもとに作成しています。

なぜ物流業界でDXが推進されているのか

現在の物流業界は様々な問題に直面しています。

トラックドライバーの高齢化や若年層の確保難などによる人手不足問題、働き方改革関連法の適用(2024年問題)による労働環境の規制、収入減少からなるドライバー離れ、さらには国際情勢の変化とグローバルサプライチェーンへの影響など多岐にわたります。

これらの物流業界が抱える様々な問題は、2020年頃に流行したコロナ禍を境に顕在化または加速化したものが多く、それぞれが密接に関わり合っていると考えることができます。

例えば、物流業界では、主にトラックドライバーの人手不足や高齢化、長時間労働などがコロナ禍以前より問題視されてきましたが、コロナ禍突入後、巣ごもり需要の爆発的な増加によるEコマースの利用拡大が起因となって、これまでの物流キャパシティを大きく上回る物量が、ラストワンマイルの配送現場へ流れ込みました。

これにより現場への負担が一気に増大し、人手不足と物量が急激に増えたことで、長時間労働の問題にも拍車がかかり、加えて過酷な労働環境と賃金のバランスも均衡が取れているとはいえない状況が重なったことで、物流業界全体の構造上の問題が社会的に強く再認識されました。

こうした背景と労働環境改善への社会的な要請が合わさって、2024年4月から適用が開始されたトラックドライバーの時間外労働等の上限規制(2024年問題)がより重要な意味を持つようになりました。

このようにコロナ禍をきっかけに、より可視化された様々な問題は、物流業界の大きな課題として現在に繋がっています。

物流DXは、これらの連鎖する課題を根本から解決し、持続可能でレジリエンスの高いシステムを構築するための最適な手段の一つとして、現在、物流業界で推進されています。

DXとは?デジタル化との違い

デジタルトランスフォーメーション(Digital Transformation = DX)とは、様々なデジタル技術を活用し、それらを統合することで、単体ではなく全体のプロセスを最適化し、企業体制やビジネスモデルそのものの変革を促し、新たなイノベーションを生み出すことです。

このDXの概念は、現在の物流業界が抱える様々な問題を解決し、そのあり方自体を変革するための取り組みへと繋がります。そのため、物流DXの推進は、大企業だけでなく中小企業の物流事業者にも求められています。

DXを理解する上で、多くの人が混同しやすいのがデジタル化ですが、それぞれには明確な違いがあります。例として、ビジネスにおけるデジタル化とは、主に以下の二つの段階を指しています。

①デジタイゼーション(Digitization)

アナログなデータや文書、あるいはプロセスをデジタル形式のデータに変換することです。例えば、紙の書類をスキャンしてPDF化したり、名刺をデータで管理したりするような段階を指します。

②デジタライゼーション(Digitalization)

デジタル化されたデータを活用し、特定の業務効率化や、サービスの一部をシステム化する段階です。例えば、会議をオンラインで行ったり、顧客情報をシステムで管理したりするような、既存業務の範囲を出ない部分的なシステム導入がこれにあたります。

DXは、これら個々のデジタル化を包括し、企業全体、ひいてはビジネスモデルそのものに変革をもたらすという点が大きく異なります。

DXを実現するためのポイント

DXを実現するには、単に新しいITツールを導入するだけでは不十分で、プロジェクトを成功させるためのいくつかの重要なポイントがあります。

1、経営層のコミットメントと全体像の共有

第一段階として特に有効なのは、プロジェクトチームだけでなく、経営レベルの陣営がプロジェクトに参加し、DXのビジョンを共有することです。

その上で、企業全体の体制やビジネスの全体像を明確化し、社内外の関係者との連携強化を目指します。

DXは単なるIT導入プロジェクトではなく、企業全体の根幹に関わる変革であり、経営層が強いコミットメントとリーダーシップを発揮することで、各部門との協力体制が生まれ、全社一丸となって変革に取り組むことができます。

また、サプライヤーや顧客、パートナー企業といった社外の関係者との連携も、DXを成功させるための重要な要素となります。

2、自社に合ったDXの模索と現実的な推進

DXの推進は、「社会全体の取り組むべき課題」として壮大なスケールで語られることが多く、どこから手をつけて良いか戸惑ってしまうケースも少なくありません。しかし、企業体制や事業規模に合わせたDXの形を模索することが、現実的かつ実現性の高いDXに繋がります。

DX推進において重要な点は、いかに自社を中心とした変革を行う範囲を明確にするかということです。そして、どこまでのステークホルダーに協力を仰げるかを見極め、中長期的な判断のもとでプロジェクトを継続していくことができるのかが、成功の鍵となります。

まとめ

今回は、物流DX推進の背景やDXの概念、実現のためのポイントについてご説明しました。

物流DXは、業界全体の課題として広範的な視点が求められますが、企業単位での実現に向けて、まずは特定の部署や業務からスモールスタートし、そこで得られた成果をもとに徐々に範囲を広げていくといった方法も有効です。

関連記事として、以下の記事では、物流DXの考え方や取り組み例、物流DXのはじめかたについて解説していますので、ぜひご覧ください。

参考物流DXの取り組み例とはじめかた

現在、様々な業界で推進さ ...

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