世界の物流事情

船荷証券(Bill of Lading)の役割や種類、記載内容について

他国の取引先と貿易を行う際には、契約の締結や貨物のやり取り、金銭の支払いといった取引の流れの中で、様々な書類のやり取りも同時に行われますが、なかでも重要な貿易書類のうちの一つとしてあげられるものに船荷証券(ふなにしょうけん/英語表記では Bill of Lading)があります。

今回の物流手帖では、船荷証券(Bill of Lading)の役割や種類、記載内容についてご説明していきます。

※本記事は2025年2月時点の情報をもとに作成しています。

船荷証券(Bill of Lading)の役割

船荷証券(Bill of Lading = 略して「B/L」)とは、貿易を行う際に発行される重要な書類のうちの一つで、荷送人と運送人との間で結ばれる運送契約を証明するものです。通常、運送人である船会社が荷主から貨物を引き取り、船積みを行った後に船会社によって発行されます。

船荷証券の主な役割には、以下などがあります。

①運送契約の証明

運送条件や運賃などの詳細が記載されており、運送人が荷主から受け取った貨物を目的地まで安全に運送することを約束(責任を負う)した、運送契約の証拠書類としての役割。

②貨物の受取証

運送人が荷主から貨物を受け取ったことの証明として、運送する貨物の種類や数量、状態、梱包形態などが記載され、貨物を受け取った時点での貨物の状態を証明することができます。

③貨物の引換証

輸入地で荷受人が貨物を引き取る際に、船会社に船荷証券を提示することで、デリバリー・オーダー(Delivery Order = 略して「D/O」)を発行することができます。デリバリー・オーダーとは荷渡指図書のことで、輸入した貨物の保管先から貨物を引き取る際に必要となる書類です。

※デリバリー・オーダーについて、詳しくはページ下部の関連記事のリンク先よりご確認ください。

④有価証券

船荷証券は手形や小切手などと同様に有価証券としての性質を持っており、貨物の引き渡しを請求する権利を有しているため、運送する貨物の相当額と同様の価値があります。

このように船荷証券は、貿易取引における重要な役割を担う書類であり、その役割や種類を理解することは、貿易取引全体の流れを把握し、取引を円滑に進めていくためには必要不可欠です。

船荷証券の種類と主な記載項目

船荷証券は、書類が発行されるタイミングや運送条件、またどのように発行されるかによって種類や名称が異なります。

・オリジナルB/L(Original Bill of Lading)

船荷証券の元本で、有価証券(貨物の引き渡し請求権を証券化した有価証券)としての機能を有しているため、裏書による譲渡が可能です。書類の安全対策や紛失リスクを軽減するため、通常、3部発行されます。

・指図式船荷証券(Order B/L)

貿易取引の支払条件が信用状を用いて行われる際には、船荷証券の荷受人(Consignee)の欄を指図式で記述する必要があります。一般的には「to order」または「to order of Shipper」と記載され、銀行が発行する信用状条件と正確に一致させる必要があります。

・記名式船荷証券(Straight B/L)

船荷証券の荷受人の欄に特定の名前が記載されている船荷証券のことで、荷受人欄に記載された特定人のみが貨物の引き渡し請求権を持つものとなります。主に直接送金や前払いなどの支払条件の際に使用します。

・受取船荷証券(Received B/L)

貨物を運送人である船会社が受け取った際に発行される船荷証券。

・船積船荷証券(Shipped B/L)

貨物が本船に船積みされた際に発行される船荷証券。

※信用状取引の場合は、貨物が確実に船積みおよび出荷されたことを証明するため、船積船荷証券でのやり取りが求められます。なお、受取船荷証券で発行された場合は、運送する船に貨物の積み込みが完了した旨と船積みを行なった年月日を記載することで、船積みの証明となり、船積船荷証券と同様に扱うことができます。この船積証明のことを「On Board Notation」といいます。

・Combined Transport B/L

複合運送(複数の輸送手段を組み合わせた運送方法)の場合に NVOCC(Non-Vessel Operating Common Carrier:非船舶運航業者)によって発行される運送証券。

船荷証券に記載される内容は、それぞれ大きく変わるといったことはなく、一般的には以下の項目が記載されています。

    • 運送人(船会社名)
    • B/L No.
    • 荷送人(Shipper)名および住所
    • 荷受人(Consignee)
    • 貨物の到着通知先(Notify Party)
    • 輸出国側での貨物の引き取り場所(Place of Receipt)
    • 船積港(Port of Loading)
    • 本船名(Ocean Vessel)および航海番号
    • 荷揚港(Port of Discharge)
    • 輸入国側での貨物の引き渡し場所(Place of Delivery)
    • 最終仕向地(Final Destination)
    • コンテナ番号
    • シール番号(当該コンテナのシリアルナンバー/封印番号)
    • 荷印(Marks & Nos.)
    • 貨物の数量や種類、重量や容積などの明細
    • 運賃
    • B/Lの発行数や発行日、発行先や船積みを行なった日付など
    • 運送人の署名

※コンテナ輸送の場合は、Place of Receipt 欄に輸出国側の CY や CFS 名が記載され、Place of Receipt 欄には輸入国側のCYやCFS名が記載されます。

サレンダードB/Lと海上運送状について

現在の海上輸送は、コンテナ船の普及により従来と比べると高速化されているため、貨物が荷揚港に到着した時点で船荷証券が手元にないといった事態が発生することもあります。その場合に輸入地で荷受人が貨物をスムーズに引き取るための仕組みとして、サレンダードB/Lや海上運送状があります。

・サレンダードB/L(Surrendered Bill of Lading)

輸入地での貨物の引き渡し請求を行う場合は、通常、船荷証券(オリジナルB/L)の呈示が必要になりますが、上述の通り書類の到着が間に合わない場合があります。

このような事態を想定し、輸入後の貨物の引き取りをスムーズに行うため、輸出国側の船積地(元地)で発行されたB/Lを再度運送人に引き渡す(Surrendered)ことで、荷受人は輸入国側の仕向地で船荷証券(オリジナルB/L)の呈示をすることなく貨物の引き渡し請求ができるといった仕組みです。

手続きとしては、発行された船荷証券(オリジナルB/L)全通に「Surrendered」のスタンプと日付が押印され、運送人は荷送人にサレンダードB/Lであることが明示された船荷証券のコピーを引き渡します。荷送人はメールやFAXなどで当該書類を荷受人に送付します。

・海上運送状(SeaWaybill)

海上運送状は、貨物の運送条件等が記載された契約書のことで、併せて貨物の受領書の機能も有した貿易書類です。海上運送状を利用する場合は、仕向地での貨物の引き取りにかかる手続きが簡略化されており、本船到着前に通知される貨物の到着案内(Arrival Notice)に荷受人として署名することで、デリバリー・オーダーを発行することができます。

留意点として、サレンダードB/Lも海上運送状も有価証券ではないため、信用状取引の際の担保や裏書による譲渡ができないので注意が必要です。

まとめ

今回は、船荷証券(Bill of Lading)の役割や種類、記載内容についてご説明しました。

船荷証券に関して理解を深めることは、貿易取引の全体像を把握し、取引におけるモノやカネの流れをより理解するためにも役立ちます。本記事では、船荷証券の概要についてご説明をした内容になるので、関連記事や今後掲載する船荷証券に関する記事もぜひご活用ください。

また、今回の関連記事として、以下の記事ではデリバリー・オーダーについて解説していますので、ぜひご覧ください。

 

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