海外の展示会やイベントなどで、商品見本や機材等の展示物を海外へ輸出し、
展示会終了後に日本へ輸入する場合、通常の通関手続きでは煩雑な上、関税と消費税がかかってきます。
今回の物流手帖では、今後、海外進出などを計画している企業の方に向けて、
知っておくべき便利なカルネ手帳についてご紹介します。
※本記事は2025年9月時点の情報をもとに作成しています。
ATAカルネとは
ATAカルネとは、世界の主要国間で結ばれている
「物品の一時輸入のための通関手帳に関する通関条約(ATA条約)」
に基づいて発給される通関書類のことで、カルネはフランス語で手帳を意味します。
ATAカルネを利用することで、展示品や販促物などを日本から海外の展示会場まで往復させる際に、
簡単に持ち運びすることができ、なおかつ免税の適用を受けることができます。
人の出入りにパスポートを使用するように、物品の出入国の際に利用するのが「カルネ手帳」です。
通常、貨物の輸出入を行う際は税関へ申告し、輸出入の許可を得る必要があります。
これらの手続きは煩雑な上、行きと帰りの両方に関税がかかってしまうので、
条件を満たす場合はカルネ手帳を利用することがおすすめです。
ATAカルネが便利な貿易
ATAカルネの利用が便利な貿易には、以下などがあります。
・海外での展示会
・イベントで利用する機材
・商談のための商品見本
上記のケースでは、相手国への輸入目的で物品を輸出するわけではなく、
持ち帰ることが前提の貨物になります。
こういった貨物を簡易で、かつ無税で輸出入できるようにした制度がATAカルネです。
なお、展示会やイベントでも現地で使い切るものや、
処分していくものに関しては、
通常の輸入手続きが必要になりますので、注意が必要です。
ATAカルネの手続き
ATAカルネを利用して持ち込もうとする国が、
ATA条約に加盟していること(現在は約80カ国が参加)が必須となります。
また発給後のカルネ手帳の有効期間は、
1年間となっていますので注意が必要です。
カルネの申請は、一般社団法人 日本商事仲裁協会で行い、
書類の発給には数日かかりますので、前もって準備しておきましょう。
申請の際には、商品画像や商品固有の番号(シリアルナンバー、バーコード等)
も必要になる場合もあります。理由は、輸出されたものと輸入されたものが、
完全に一致していると証明できるようにするためです。
カルネの発給に必要な料金には発給手数料に加えて、
申請者から現金、または銀行保証書を担保として提出するか、
担保措置料を支払う必要があります。
この担保・担保措置料は、相手国に輸入した際に何らかの理由で再輸出できなくなり、
輸入税を納めなければならなくなった場合に、
日本商事仲裁協会が立替払いを行ってくれるためのものになります。
(担保措置料は返金されません。)
もちろん立替となるので、申請者が後日、
立替分を日本商事仲裁協会に支払う必要があります。
まとめ
今回は、カルネ手帳のおおまかな概要についてご紹介しました。
気を付けるべき点としては、カルネ手帳は貨物と
一緒に持ち運びする必要がありますので、
手帳は必ず紛失しないように注意しましょう。
また、カルネ手帳を利用した輸出入の手続きは、対税関のみであり、
他法令は税関(=通関)とは関係ありません。
他法令に該当する物品を持ち運ぶ場合は、
税関申告前の段階で認可を受ける必要があるため、
税関申告も出来ない事になります。
他法令に関わる貨物(動植物検疫、食品、医療・医薬品など)は、
輸出入国側で別途、関係省庁にて許認可が必要です。
輸出入の終了後は、日本商事仲裁協会へ手帳を返却し、
そこで問題がなければ、預けていた担保はこの時点で返金処理されます。
カルネ手帳の利用自体は、難しくない手続きになりますので、
海外での展示会やイベントに参加を考えている企業の方は、
ATAカルネの活用をおすすめします。
関連記事として、以下の記事では、
ATAカルネの加盟国とデジタル化について解説していますので、
ぜひご覧ください。
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