令和7年に施行された「改正トラック法(貨物自動車運送事業法)」は、令和8年に施行された「トラック適正化二法(トラック新法)」によって規定内容が拡張されました。
これは同じく令和8年に義務化が始まった「物流効率化法」の流れに併せた、運送業界の質の向上等の実現を目的としており、運送事業者の多重下請け構造を是正し、取引の透明性を確保するための取り組みとして浸透しつつあります。
その中で、荷主(真荷主)から運送依頼を受けた「元請け事業者」に作成義務が課されているものが「実運送体制管理簿」です。
今回の物流手帖では、実運送体制管理簿の基礎知識から、作成義務が生じる対象者の範囲、記載すべき必須項目、
実務において気を付けるべき点について解説します。
※本記事は2026年8月時点の情報をもとに作成しています。
実運送体制管理簿の基礎知識
実運送体制管理簿とは、取引における運送体制を請負階層ごとに可視化し、下請け関係の実態と運送内容の詳細を明確にするための管理簿のことです。
令和8年版の改正トラック法上では、実運送体制管理簿の作成者が「元請け事業者」として定義されており、対象者となるのは、
軽貨物運送事業者を除く貨物自動車運送事業者と、令和8年4月1日からは貨物利用運送事業者も対象者として新たに追加されました。
実運送体制管理簿の保管期間は、引き受けた貨物の運送が完了した日から1年間で、紙媒体または電磁的記録としてデータを営業所に保管しなければなりません。
実運送体制管理簿の作成基準
実運送体制管理簿の作成基準は大きく分けて二つあります。
一つは、真荷主から運送依頼を受けた際に、契約上の貨物の実重量が1.5トン以上になる場合です。
この場合に実運送体制管理簿の作成対象となり、1.5トン未満の場合は対象になりません。
なお、実重量が把握できない場合は容積換算重量で判断するものとされています。
注意点すべき点として、貨物の実重量1.5トン以上の基準値は、一度の運送依頼で引き受けた全体の貨物重量で該当するか否かを判断するものとされているため、納品先(荷受人)が複数ある場合で、それぞれの貨物重量が基準値を下回る場合でも作成対象に該当します。
また積合せ運送(混載便)についても同様に、一度の運送依頼あたりの貨物重量が 1.5 トン以上であるかどうかによって判断されます。
※納品先(荷受人)が複数ある場合で、運送契約が納品先ごとに異なる場合は、各運送ごとの貨物重量によって判断されます。
次に、真荷主から引き受けた貨物の運送について、一部または全部を他の貨物自動車運送事業者の行う運送を利用した場合に、実運送体制管理簿の作成対象になります。
あくまでも運送体制が構造化された運送契約時に必要となるもので、真荷主と実運送事業者による単一構造の運送契約においては、実運送体制管理簿の作成対象になりません。
まとめると、真荷主から運送依頼を受けた貨物の重量が1.5トン以上あり、貨物の一部または全部を利用運送する場合にのみ実運送体制管理簿の作成が必要になります。
実運送体制管理簿に記載する項目
実運送体制管理簿に記載する項目としては、以下の内容が規定されています。
・実運送事業者の商号または名称
・実運送事業者が実運送を行う貨物の内容
・実運送事業者が実運送を行う区間
・実運送事業者の請負階層
実運送体制管理簿の作成にあたっては、元請け事業者は委託先に「実運送体制管理簿の作成対象である」旨と請負内容(元請け事業者の連絡先、真荷主の名称、何次請けか)
を確実に伝える必要があり、通知を受けた各事業者が実運送を再委託する場合には、同様に委託先への通知義務が課せられます。
また、実運送を行なった運送事業者は、元請け事業者に対して実運送事業者の商号または名称、貨物の内容、運送区間、何次請けかの情報の通知義務が課せられます。
この場合、自身の委託元を通じて元請け事業者に通知することも可能とされています。
実務において気を付けるべき点
改正トラック法により、対象となる元請け事業者に義務付けられる実運送体制管理簿の作成および保管、委託先への通知義務、実運送事業者の通知義務など、
煩雑な規定への対応が求められるなか、実務において気を付けるべき点には以下などが挙げられます。
①運送契約ごとの管理簿作成が不要になるケース
系列化等により取引構造が固定化されている場合など、真荷主から貨物の運送を引き受ける時点で、当該貨物の運送について、実運送を行う貨物自動車運送事業者やそこに至るまでの全ての委託先事業者
(委託関係・取引構造)が明らかになっている場合には、実運送体制管理簿を一度作成することで、
それ以降の記録は不要とされています。
※委託関係(取引構造)や実運送事業者が一社でも異なる運送を行った場合には、当該運送について実運送体制管理簿に記録する必要があります。
※保管期間を経過した後に、初めて行う運送については改めて管理簿に記録する必要があります。
②元請け事業者が管理簿に記載されるケース
元請け事業者が貨物の一部を実運送した場合には、委託先の実運送事業者と同様に管理簿に実態を記録する必要があります。
③請負階層のカウント方法
請負階層のカウント方法は、元請け事業者を0次とし、最初の委託先を「1次」、さらにその先の委託先を「2次」とします。
委託次数の制限に関しては、トラック適正化二法によって「最大で2次まで」に制限するための措置を講ずるよう努めなければならないと規定されました。
まとめ
今回の物流手帖では、実運送体制管理簿の基礎知識から、作成義務が生じる対象者の範囲、記載すべき必須項目、
実務において気を付けるべき点について解説しました。
実運送体制管理簿の作成は、災害時やその他の緊急時でやむを得ない場合を除いて、基本的に必要となるため、
真荷主から運送依頼を受けた時点で早めに作成対象の有無を判断し、準備を進めていくことが望ましいでしょう。
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