輸入貨物をスムーズかつ迅速に引き取るための制度である「予備審査制」は、2026年7月21日の運用見直しに伴い、一部の事業者を除いて、マニフェスト申告時における「審査区分(確認や検査の要否)」の通知時期が変更されました。
この見直しにより、本申告のタイミングで「区分②(書面審査)」や「区分③(検査)」が判明した場合は、急遽その検査対応にあたるだけでなく、貨物到着後の貨物搬出や配送スケジュールの再調整が必要になることがあります。
その際に、税関で具体的にどのような検査が行われ、輸入許可が降りた後のリードタイムにどの程度の影響を及ぼすのかを事前に把握しておくことで、予期せぬトラブルやコスト発生といったリスクを軽減することができます。
今回の物流手帖では、2026年7月21日に実施された予備審査制の審査区分と、税関検査の内容やリードタイムへの影響、それに伴うスケジュールの調整について解説します。
予備審査制の審査区分と最新の変更内容
まずは、予備審査制度において指定される「3つの審査区分」と、2026年7月21日から開始された制度見直しの概要を整理して
おきましょう。
予備申告を行うと、税関から以下の審査区分が指定されます。
・区分①(簡易審査):
書類審査や実物検査がなく、本申告後に即時許可となる区分
・区分②(書類審査):
インボイスやパッキングリストなどの通関書類を提出して審査を受ける区分
・区分③(検査):
税関職員による貨物の実物確認(税関検査)が必要な区分
従来は、予備申告を行うことで本申告(貨物到着)の前にあらかじめ審査区分が通知されていました。
そのため、「区分①」であると早期に判明した場合には、本申告後の即時許可を見越して、トラックの手配を事前に確定させておくなど、輸送スケジュールの計画的な組み立てが可能でした。
しかし、2026年7月21日以降、マニフェスト申告による予備審査制の不適切な利用の背景を受けて、AEO事業者(認定通関業者等)などを除く一般事業者においては、予備審査を行っても審査区分(1〜3)の通知タイミングが、本申告時(貨物到着後など)へ変更される運用制限が導入されました。
これにより、以前のように、あらかじめ「区分①」の想定で貨物の輸送手配を確定させておくといった事前準備が困難になりました。
また万が一、本申告時に「区分②」や「区分③」が出た場合には、そこから急遽スケジュールの再調整が必要になるため、現場では迅速なリカバリー対応が求められています。
税関検査の内容とリードタイムへの影響
本申告後に「区分②(書類審査)」や「区分③(現物検査)」の判定が出た場合、実際にはどこでどのような確認が行われ、どれくらいの時間がかかるのでしょうか。
それぞれの内容とリードタイムへの影響は以下の通りです。
区分②(書類審査)の内容
税関にて、申告データと提出書類(インボイス、B/L等)に矛盾がないか精査されます。
主な確認ポイントは、品目分類(HSコード)、課税価格、関税率の妥当性のほか、他法令の許認可や輸入禁制品への該当有無などです。
書類に疑義や不備がなければそのまま許可となりますが、確認事項や価格の疑問が生じた場合は追加資料の提出や、後述する現物検査へ移行することがあります。
区分③(現物検査)の内容
書類だけでなく、貨物の実物を税関職員が確認する手続きです。コンテナ貨物の場合、検査はコンテナヤード(CY)や保税蔵置場、指定検査場などで行われます。
検査方法には、貨物の一部を抜き出して確認する「見本確認」や「一部指定検査」のほか、特に注意を要するのが「全量取出検査(デバンニング検査)」です。
これはコンテナ内のすべての貨物を一度外へ引き出し、申告通りの品目・数量であるか、不審物や原産地表示の偽装がないかなどを徹底的に目視確認するものです。
リードタイムへの影響の目安
審査や検査が指定されると、通常の即時許可(区分①)に比べて、貨物の引き取りまでに以下のタイムロスが生じる可能性があります。
区分②(書類審査)の場合:
書類の提示から審査完了まで、順調であれば「数時間〜半日程度」で完了します。ただし、価格の妥当性証明や他法令の確認などで追加資料を求められた場合は、「1日〜数日」かかることもあります。
区分③(現物検査)の場合:
検査の種類や混雑状況によって影響が大きく異なります。
1.見本確認・一部指定検査:
検査場への引き入れや部分的な開梱作業を含め、「半日〜1日程度」の遅延が目安となります。
2.全量取出検査(コンテナ貨物):
コンテナからの全量デバンニング作業や立ち会い手配、再バンニング(積み戻し)が発生するため、「1日〜2日以上」のリードタイム延伸を見込んでおく必要があります。
審査区分通知後のスケジュール調整について
税関による検査が必要になった場合は、事前に組んでいた配送スケジュールが白紙になり、出荷先への遅延や手配済みのトラックの待機といった混乱が生じる可能性があります。
その際、物流ラインの停滞を最小限に抑えるために現場で取り組むべき対応策として、以下などがあげられます。
1、配送ルールの見直し
予備審査制の変更により本申告の段階で区分が判明するため、万が一、検査が必要になった場合の「待機料金」や「当日キャンセル・延期時のペナルティ基準」について、運送事業者と事前にすり合わせを行っておく。
2、情報共有の体制強化
審査や検査が必要になった場合、状況がどの段階(書類確認中、検査場の順番待ち、デバンニング中など)にあるかによって、後続の引き取り可能時間が大きく変わります。
あらかじめ通関業者やフォワーダー、納品先との連絡ラインを密にし、迅速な進捗状況の共有体制を整えておくことで、貨物搬出までのタイムロス防止に繋げます。
また、納品スケジュールに予備日をあらかじめ組み込んでおくことで、状況の変化にも即応できる柔軟な工程で進めることができます。
まとめ
今回の物流手帖では、2026年7月21日に実施された予備審査制の審査区分と、税関検査の内容やリードタイムへの影響、それに伴うスケジュールの調整について解説しました。
制度変更に伴い、輸入におけるマニフェスト申告で予備審査制を利用する場合は、審査区分の通知時期に合わせた事前対策を行い、税関検査の内容や発生しうる遅延の目安を把握しておくことで、万が一の検査発生時にも柔軟に対応できるリスク管理体制を整えておくことが重要です。
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