輸出や輸入など他国と貿易取引を行う際、書類管理や物流手配、為替リスクへの対策など多くの課題がありますが、なかでも法律や国際ルールに関する問題はビジネスを継続する上で最も重要です。
日本は自由貿易を推進していますが、公正な取引には各国の法律や、WTOやFTA/EPAといった国際的なルールを正確に理解し、それらに準拠する必要があります。
今回の物流手帖では、WTOやFTA/EPAの概要と関税削減によるコスト削減や競争力強化のためのポイントについてご説明します。
※本記事は2025年8月時点の情報をもとに作成しています。
WTOとは?設立の背景と現状
第二次世界大戦後、国際社会はブロック経済による各国の保護貿易が大戦の一因となったことを踏まえて、世界経済の発展と自由貿易の礎を築くために、GATT(General Agreement on Tariffs and Trade)という「関税と貿易に関する一般協定」を発効し、国際貿易のルールを規定しました。
GATTは当時23カ国からなる暫定的な組織で、「輸入制限の撤廃」と「関税等の優遇措置を加盟国全てに平等かつ無差別に適用する二つの原則(最恵国待遇と内国民待遇)」をもとに、多角的貿易体制の基礎を築くことで自由貿易の実現を目指しました。
・最恵国待遇(MFN:Most-Favored-Nation Treatment)
全ての加盟国に同等の貿易条件を与えること。(例:GATT加盟国のA国と通商条約などで他国より有利な条件の付与を取り決めた場合、その条件はGATTに加盟する全ての国にも適用される)
・内国民待遇
内国税や国内の規則などで、輸入品を国産品に比べて不利に扱わない(国産品と同様に扱う)こと。
GATT体制が発足し、運営を進めていくなかで、既存のルールの大幅な拡充や新しい分野のルールが策定されたため、各協定の管理や運営の基盤を強化する必要性が高まり、GATTを一部に取り込む形で、新たにWTO(World Trade Organization)すなわち世界貿易機構が設立されました。
WTOでは関税義務だけでなく、サービス貿易、知的財産権、補助金、非関税措置など、幅広い貿易ルールを規定し、統一された紛争解決手続きの整備と各国の一方的措置を防止するシステムが組み込まれました。
WTOの設立から今年で30周年を迎える現在、166の国や地域が加盟しており、世界の物品貿易の約7割がWTOの最恵国待遇に基づいて取引されています。
WTOとFTA/EPAの関係性
WTOに加盟する国は年々増加し、それに比例して各国の交渉分野も拡大しましたが、WTOの意思決定は、原則として全会一致のコンセンサス方式で行われるため、貿易自由化に向けた各分野の交渉は今も難航しています。
そのため限られた国や地域または複数国との間で行う、貿易の自由化を目的としたFTA(自由貿易協定)の締結や、投資や人材交流、知的財産の保護など幅広い分野でルールを作成し、経済的な関係強化を図るEPA(経済連携協定)の締結が、各国によって進められていきました。
世界のFTAは現在、370以上が発効されており、EPAは日本において50カ国との間で21の協定が署名および発効済みであることから、広域的なFTA/EPAの増加が自由貿易を促し、世界経済の発展につながっている反面、WTOの求心力低下につながっている一面も見受けられます。
FTAとEPAの違い
FTAとEPAは、FTA/EPAと表記されることが多いため混同されがちですが、FTAは主に輸出入にかかる関税の撤廃や削減などを目的とする国際協定です。一方、EPAは、FTAの内容に加え、投資や人材交流、知的財産の保護なども含む、包括的な協定です。
WTOは加盟国(現在で166カ国)間の国際的な貿易のルールを規定し、平等かつ無差別に適用されるものであり、FTAやEPAはその例外として二国間または複数の国や地域との間で、より広範囲な分野の貿易課題の交渉やルールを作成することができるため、現代のビジネスに特化した協定であるといえます。
関税の削減と競争力強化のポイント
WTOやFTA/EPAは国際社会全体や国同士の取り決めですが、その影響を実際に受けるのは貿易事業に関わる当事者であるため、これらを理解した上で、各企業は様々な法律面の問題への対策や、国際ルールを準拠した事業戦略を構築していく必要があります。
なかでも注目すべき問題といえるのは、輸出入規制と関税です。
輸出入規制は、そもそも対象となる製品を輸出または輸入できるのか、また外為法や輸出入の貿易管理に関わる法律、そのほか他法令などで許可・申請が必要なのかなど、正確な判断を行うためのハードルが非常に高いため、専門家に依頼するケースも少なくありません。
次に関税ですが、関税は最終的な販売コストに直結するため、サプライチェーンを構築する段階から戦略的に意識すべき課題として認識を高めることが重要です。
関税には、国定税率や協定税率などの種類があり、それぞれ適用される税率が異なるので、関税の削減とコストの適正化を最新のものと照合するために、WTOやFTA/EPAなどの動向や最新情報に目を向けることは必要不可欠です。
これらを企業の組織体制に落とし込み、人材やシステムを的確に整備することができれば、国際社会における競争力強化につながるのではないでしょうか。
まとめ
今回は、WTOやFTA/EPAの概要と関税削減によるコスト削減や競争力強化のためのポイントついてご説明しました。
貿易に関する法律や国際的なルールを理解する第一段階として、まずはその枠組みや背景を知ることで、将来的な課題への戦略構築や企業体制の整備につなげることができます。
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